進まない「教員の働き方改革」…多忙だからこそますます“ベネッセ依存”が進む教育現場の事情
4月19日に発表された「教員の働き方改革」の素案には、「これでは長時間労働はなくならない」という批判が相次いだ。幾度となく問題視されながらも、なかなか改善されない教員の過酷な労働環境。そんな状況を利用して、巧みに営業活動を行う企業があるという。
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日本教職員組合(日教組)が昨年、全国の小学校から高校の教員らを対象に行った調査によれば、公立教員の残業時間は月96時間に達するとのことで、いわゆる“過労死ライン”を優に超える実態が改めて明らかになった。こうした過酷な労働環境は教員の志願者数にも影響し、近年は全国的に教員の採用倍率が低下傾向にある。重大な労働問題はさることながら、競争がなくなることで教育の質の低下まで叫ばれている事態なのだ。
このような背景を受けて、教員の働き方改革を検討している中央教育審議会は4月19日、公立教員に“残業代の代わりとして支給している”月給4%分の手当てを10%以上に引き上げることを柱とする素案を公表した。
しかし、多少手当てが引き上げられたとしても、残業代がつかない構造自体は変わらぬまま。それゆえ、「教員が“働かせ放題”の状態にあることに変わりはない」という批判が相次いでいるのである。
“ベネッセ依存”
進まない学校の働き方改革――。実は、この状況を巧みに利益に繋げている企業があるのだという。
「今の教育現場に最も食い込んでいる、ベネッセです。その背景には、多忙によって手が回らない教員の労働環境があるのです」
そう語るのは、さる高校のベテラン教員。
「例えば高校の教育現場では、模試をベースにした“ベネッセ依存”が生じています。同社が展開する『進研模試』は、大手予備校のものよりも安価で導入しやすいため、導入校が最も多くなっています。その模試が終わるごとに、結果をフィードバックしたり、ニーズをヒヤリングしたりする形で、ベネッセの営業担当者が来校されるのですが……」
模試で得られたデータを用いて複数の教員をまわり、自社サービスの営業を行うのが彼らの“やり方”だというのだ。
「試験結果のデータを見て、『ここが弱点だから、この部分を伸ばす必要がある』という文脈で、自社が持つ教材や、各高校用にカスタマイズした問題集の販売に繋げようという営業手法です。正直、人手も時間も限られた教育現場において、こうした提案があるのはありがたい。膨大な模試データを所有し、かつ教材の作成にも注力しているベネッセだからこそできる営業でしょう」
教員の労働環境が過酷であるからこそ、客観的なデータを活用して効率的な教育手法を提供するベネッセに、学校側が頼らざるを得ない構造ができつつあるのだそうだ。
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