「自分はブックオフから逃れられないのか…」 漫画家・大石トロンボが語る、埋まらない「東京との距離感」
“見られていた……!”
「大石くん、船橋のブックオフで見かけたことあるよ。あ、同じ学科の人だ、って」
「え……!」
心は東京から千葉に一瞬にして引き戻された。見られていた……! 休日のたびブックオフに自転車で足繁く通っていたあの頃の自分を。あしたのジョーの尋常じゃない面白さを知り、まだ古本価格100円~200円で買えた講談社コミックスの完全復刻版を夢中で集めて、どうしても見つからない14巻だけ新品で買うかどうか悶々としていたしょうもない自分を。その時自分はどんな顔をしていたのだろう。どんなことをしている姿を見られたのだろう。何ともいえない恥ずかしさに包み込まれた。でも少し誇らしくもあった。やはり自分はブックオフからは逃れられないのだ、と。
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