全く飛ばない「新基準バット」で不適合製品2510本発覚…一流高校球児からは「木製バットの方が飛ぶ」という証言が
木製バットの方が飛ぶ?
「新基準バットの導入で、打撃に割く練習時間が急激に増えた印象はありませんが、エンドランや実戦を想定しての練習内容は変わってきました。三塁に走者を置き、内野ゴロの間に1点を取る『ゴロ・ゴー』の練習が多く見られるようになりました」(前出・同)
宝会長の言う、1点を確実に積み上げていくスタイルを構築するためだろう。
この不適合製品発覚の会見の2週間ほど前、「U-18日本代表候補選手強化合宿」が奈良県下で開かれた。これは夏の甲子園大会後に予定されている世界大会に向けての取り組みだ。その2日目に紅白戦が行われたのだが、小倉全由代表監督(66=前日大三高監督)は「木製バットの使用」を全員に命じた。
「世界大会は、木製バットを使用するルールになっています。昨夏は甲子園大会後に招集された短期合宿から木製バットを使わせたので、戸惑う球児も少なくありませんでした」
同合宿を視察した関西地区担当のプロ野球スカウトがそう説明する。強化合宿に集められたのは高校球界を代表する精鋭であり、今秋ドラフト会議での上位指名も予想されている。甲子園大会を賑わせた高校生スラッガーが木製バットに馴染めず、プロ入りしてから暫くの間、ファームで苦しむのはよくある話だ。プロ側にとっては、実戦形式での木製バットの使用は“大歓迎”だろうが、今回の合宿に集められた球児から「意外な証言」も飛び出した。
「木製バットのほうが飛ぶんじゃないか?」
複数の球児たちがそう口にしていたという。
紅白戦でホームランを放ったセンバツ優勝校・健大高崎の箱山遥人(3年)も記者団に囲まれたとき、こう感想を述べている。
「元の金属バットに似ているのは木製かなと思いました。実戦で初めて木製バットを使ったんですけど、低反発のバットよりも振りやすくて、一打席目は振れすぎて、タイミングが早過ぎて、(体が)開いてしまったところがありましたが、その後は自分の間で打ててきたんじゃないかと思います」
後にプロ野球界に進んだ甲子園スラッガーがとくにそうだが、高校時代から金属バットと木製バットを使い分けているケースが少なくない。ティー打撃や素振りでは木製バット、試合本番は金属。木製バットで練習するのは大学、社会人、プロ野球など次のステージに進んだときに備えてのことだが、試合で使用しないのは「金属バットのほうが飛ぶ」との思いがあったからだ。
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