東京の地下鉄なのに「千葉の大動脈」に成長 メトロ東西線の実力と空前の大工事が急がれる理由

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千葉側の混雑が増加

 おかげで、JRを補完するバイパスのはずの東西線に千葉からの通勤通学客が殺到し、沿線にも住宅とマンションが林立してきた。1996年には東葉勝田台から東西線に直通する東葉高速鉄道東葉高速線が開業して、さらに千葉側の混雑が増していく。

 東西線の開業当時は町だった浦安は1981年に市制施行、当時約6万5000人だった人口は2023年には17万人を超えるほど、急激な勢いでベッドタウン化が進行した。JRと東西線、東葉高速線のジャンクションになった西船橋駅は千葉県内で最も乗降客が多い駅になっている。

 東西線は、東京側からも千葉方面へのアクセスに使えるメリットがある。西船橋で京葉線・武蔵野線に乗り換えられ、京葉線の海浜幕張・蘇我方面に向かうことができるのである。データイムは海浜幕張方面の列車(ほぼ全てが南船橋止まり)が20分間隔という難点はあるが、運賃は大手町―海浜幕張を例に取ると東西線経由は523円、JR京葉線での東京―海浜幕張は571円と、JRを乗り通すより安い。

 こうなると、当然中野側より西船橋側で利用者が激増する。ところが、西船橋からの地上区間に他線との乗換駅は一切なく、11駅目の門前仲町でやっと最初の乗換駅(都営大江戸線)になる。つまり、都心に通勤する千葉都民のサラリーマンは東西線の電車に一度乗ったら、1駅ごとに乗客が詰め込まれて上がり続ける混雑率に耐えなければならない。地下区間では複々線もないので、ラッシュ時は電車が詰まりがちという二重三重のストレスに。

 その解決策が、南砂町駅の大改造だ。本線線路の間に1本線路を増やし、中野方面の電車が発着できる線路を2本に増やす。すると、前の電車が駅を完全に出る前から次の電車を停車させることができ、駅間での信号待ちの時間を減らす効果がある。これも、開業当時の予測を超えて利用者が激増したための窮余の策である。

今後も工事が必要

 今月に行われる工事では中野方面の線路を移設するのみで、以後も西船橋方面の線路移設、ホーム拡幅、西船橋方面の線路の再移設というプロセスを経るので、計3回の線路切替工事が必要だ。

 東京メトロ広報部では「2、3回目の工事の予定はありますが、まだいつになるかは決まっておりません。2回目の工事でも終日運休になる予定ですが、3回目は通常の運転をしながらの工事となる予定です」とコメントしている。

 東京の地下鉄なのに、地上を疾走して千葉県民の生命線にもなっている東西線。全線開業から半世紀を経ても、電車を運行しながらより快適な輸送を目指す取り組みが続いている。

デイリー新潮編集部

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