Googleマップ 悪評放置で医師が集団提訴 専門家が「病院の口コミなど百害あって一利なし」と言う理由
Googleは営利企業
「A.I.が『なりすまし広告』の発見を苦手にしているのも、普通に投資を呼びかけるCMとの違いを判断できないからです。口コミの場合でも、A.I.は善意ある投稿も、悪意に満ちた投稿も、第三者の感想という視点からは同じだと判断してしまうでしょう。こうした問題点を突き詰めていくと、そもそもGoogleマップに口コミの機能が本当に必要なのかという根源的な疑問が浮かびます」(同・井上氏)
飲食店や病院を対象にした格付けサイトで、正確な情報を提供しようと努力している運営企業は存在する。本当は専門の評価サイトを利用すればよく、Googleマップは口コミ機能を停止すればいいという話なのだ。しかしながら、そういうわけにもいかないという。
「民間企業であるGoogleは常に利益を追求します。今やGoogleマップは交通標識に匹敵する社会的インフラとなりましたが、そのサービスは社会貢献のため無償で提供されているわけではありません。以前から、マップの口コミ機能はネット広告との親和性が高いと指摘されてきました。Googleとしては、マップを使って利潤を生み出そうとするのは当然のことだとも言えます」(同・井上氏)
またGoogleだけを悪者にするのはフェアではないだろう。やはり事実無根の口コミを撒き散らすユーザーの責任も問われるべきなのは言うまでもない。
病院に口コミは必要か?
「たとえ問題が全くない、善意に満ちた口コミだったとしても、その大多数は素人の単なる感想です。専門家による公平公正で客観的な批評とは全く異なります。Googleマップの口コミを読んでいると、『私たちお客さまは神様だ。だからサービス提供者には何を言ってもいいのだ』という消費者の傲慢を感じることもあります。口コミを投稿する人も、それを読む人も、もっと冷静にならないと、口コミによる被害者は増える一方だと肝に銘じるべきです」(同・井上氏)
井上氏は「現実的な改善点として、Googleは飲食店と病院を同じサービス業として捉えることだけは、今すぐやめたほうがいいと思います」と言う。
「医療行為は人命と密接に関係しており、医師や歯科医師は高度な知見や専門的技能の持ち主です。ラーメン店に対する口コミですら、中には素人の勘違いが散見されます。まして病院ともなれば、素人である患者=消費者が安易に書いた感想が参考になるはずもないのです。Googleマップは病院を筆頭とする公共性や公益性の高い施設に対しては、口コミの投稿を禁止するのが現実的な改善策ではないでしょうか」(同・井上氏)