ここにきて「Wikipedia 3大文学」に脚光…絶版の「原典」復刊、文庫フェア開催を実現させた“書店員の熱意”

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 興味本位で読み始めたとたん、「続きが気になって止まらなくなる」ことから、“3大文学”と称されるWikipedia記事があるのをご存じだろうか。「三毛別羆事件」「八甲田雪中行軍遭難事件」「地方病(日本住血吸虫症)」の3つの記事のことである。

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読み応えたっぷりなノンフィクション・ノベルが原典

 実際にWikipediaの当該ページを読んでみると、それぞれがおどろおどろしい事件で目を引くのだが、なによりも妙に記述が生々しく、つい先へ先へと読み進めてしまう。

「実は、Wikipedia3大文学の解説文は、実在するノンフィクション・ノベルと 関連のある箇所が多いのです。“三毛別羆事件”の記事は吉村昭先生の『羆嵐(くまあらし)』と、“八甲田雪中行軍遭難事件”は新田次郎先生の『八甲田山死の彷徨』と、そして“地方病(日本住血吸虫症)”は小林照幸先生の『死の貝 』を参考にしていることが分かります。3作品とも骨太のノンフィクション・ノベルで、読み応えたっぷり。『死の貝』は最近文庫化されたばかりですが、残りの2作品は新潮文庫のロングセラー作品でもあります」

 そう解説するのは、このたび3作品を並べた「Wikipedia3大文学」フェアの展開をはじめた新潮社の担当編集者だ。

“3大文学”と関わりのある、『羆嵐』と『八甲田山死の彷徨』は既に刊行されていたが、『死の貝』はちょうど4月に発売が開始されたばかりとのこと。なぜ1作品だけ今になって刊行されたのか――。その裏事情を含め、3作品の概要をご紹介する。

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