「ナンパされて車に連れ込まれそうに…」「車を盗まれて全損」 川口市が直面する「クルド人問題」に迫る【スクープその後】

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「SNSで告発しているのは被害を受けた人」

 日付が変わった深夜、改めて一人で歩いたが、コンビニの前で3人のクルド人が静かに酒を飲んでいるだけ。一方、頻繁に見かけたのは、埼玉県警のパトカーだった。

 川口市議会の6月定例会に自民党議員団が提出し採択された「一部外国人による犯罪の取り締まり強化を求める意見書」の効果なのだろう。この意見書は、〈一部の外国人は(中略)人身、物損事故を多く発生させ、死亡事故も起こしており、看過できない状況が続いている〉〈窃盗、傷害などの犯罪も見過ごすことはできない〉とし、当局に犯罪の取り締まりの強化を要望するもの。採択後、県警はパトロールを強化しているのだ。

 結局、その夜は迷惑行為を目撃することはなかった。後日、改めてKさんに問うと、

「クルド人の迷惑行為をSNSで告発している人たち。それは僕を含め何らかの被害を受けている人だと思います。被害を受けていない人たちがわざわざクルド人について関心を抱き、発信する理由がありませんから。でも僕のように問題視し告発する人はどんどん増えていますよ」

 と答えた。依然としてこの街で何かが起こっていることは間違いない。

「昔のクルド人の印象は…」

 荒川を隔てて南は東京都という川口市は埼玉県最南部の街。ベッドタウンとして人気で人口約60万人。うち外国人は約4万人で全国市区町村一の比率である。

 クルド人とは中東のトルコやイラン、イラク、シリア等に住む“国を持たない”民族。日本に在留しているのはほとんどがトルコ国籍だ。

 この地にクルド人が住み始めたのは1990年前後で、94年には10人ほどに過ぎなかった。もともと川口に住んでいたイラン系のクルド人を頼ってきたのが始まりで、彼らが親族を呼び寄せ、90年代後半には200~300人に増加していったらしい。

 当時、住んでいたのは働き手となる男性ばかり。

 生まれも育ちもこの一帯という奥富精一市議が当時のことを回想してくれた。

「難民として逃れてきたクルド人が近所にいて、解体屋で頑張っておられました。すごく真面目で、一生懸命働く。それがクルド人の印象でした」

 なぜ解体業なのか。

「汚いし大変だということで日本人が敬遠した。そんなときクルド人が解体業に就いたんです。彼らは力持ちだし真面目。日本人親方からすると大助かり。そんな彼らが日本人親方のもとで仕事を学んで、独立していったんです」(松浦市議)

 それから20年余りがたち、今や2千人以上と10倍近くに急増した。

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