オイルマネーでサッカーの国際大会は中東の独壇場…それに比べに日本の現状は?

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田嶋名誉会長もサウジを支持

 そして4年後の34年は再びアジアでの開催となる。そこで当初はサウジアラビアの他にオーストラリアとマレーシア・シンガポール・インドネシアが共催での招致を目指したものの、サウジアラビア以外は立候補を断念したため、サウジアラビア開催が事実上決定した。

 22年カタールW杯では8万人と6万人収容のスタジアが各1つ、4万人収容のスタジアムが6つ用意され、いずれもサッカー専用のスタジアムだった。

 34年のW杯でも8万人以上収容のメインスタジアムの他に6万人収容が2つ、4万人収容のスタジアムも複数必要という条件があり、今年7月までに政府保証(日本の場合は閣議決定)と合わせて書類を提出する必要があった。

 FIFA理事も務める田嶋幸三JFA名誉会長は「もう少し準備の時間があると思っていたが、あまりにも短く間に合わないと判断。ベースとなる基本のもの(スタジアム)がないため諦めざるをえない。時間をかけて環境整備を進めたい。機会はもう1回ある。今回はサウジ支持が一番近道になる」と2050年までに再びW杯を単独で開催するという目標に期待を込めた。

 現在サウジアラビアには8つのスタジアムがあるものの、W杯の開催条件を満たしているのは6万9000人収容のキング・ファハド国際スタジアムと、6万2000人収容のキング・アブドゥッラー・スポーツシティ・スタジアムの2つしかない。

本気を出すサウジ

 しかもキング・ファハド国際スタジアムは陸上のトラック付きだ。その他にある6つのスタジアムは2万3000人~3万5000人収容で、半数が陸上トラック付きの多目的スタジアムとなっている。

 現状のままのスタジアムではW杯の開催条件を満たしていない。しかしカタールがハリファ国際スタジアム以外の7つを2019年から2021年にかけてオープンしてW杯に間に合わせたように、サウジアラビアが上記の開催条件を満たしたスタジアムを建設することは想像に難くない。なにしろまだ10年の余裕があるからだ。

 2011年にカタールで開催されたアジアカップを取材した際に、移動手段はバスかタクシーしかなかった。しかし11年後の22年には各スタジアムを結ぶ地下鉄が3路線も開通していたし、都市の様相もモダンになりガラリと一変していた。

 サウジアラビアはアジアカップの予選で紅海に面した都市ジェッダへ行ったことがあるが、ここはイスラム教の聖地メッカへの玄関口でもあり(約73キロ)、中東有数の世界都市でもある。

 ここと首都リヤドが34年のW杯の際はどのように様変わりしているのか想像もつかない。自他共に認める“中東の雄”だけに、カタールをしのぐ規模でW杯を開催するのではないだろうか。

 オイルマネーによる国際イベントの招致は、いましばらく中東勢の独壇場が続くことだろう。残念ながら日本には、国際大会を招致する財政的な余裕もなければ機運も高まっていないのが現状である。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮編集部

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