「ウルトラマン」大復活のウラにあった「“ドロ沼”裁判終結」「ディズニー・メソッド注入」「Netflixと新タッグ」
「ウルトラマン」が“大復活”しているのをご存知だろうか。庵野秀明氏が企画・脚本を務めた「シン・ウルトラマン」(2022年公開)の記憶も新しいが、近年、特に躍動しているのがテレビシリーズだ。13年の「ウルトラマンギンガ」を皮切りに毎年「新作」が途絶えず、7月からは最新作「ウルトラマンアーク」(土曜朝放送)がスタート予定。さらに今年はウルトラマンが世界へと羽ばたく節目の年になるという。【数土直志/ジャーナリスト】
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もともとウルトラマンは「仮面ライダー」シリーズや「スーパー戦隊」シリーズと並ぶ、日本特撮が誇る一大コンテンツだった。しかし両シリーズと比べると人気やビジネス面で盛り上がりに欠ける時期が長く続いた。
予算のかかる特撮番組は“ビジネスの裏づけ”がないと負担が大きく、シリーズ化は難しい。かといって、テレビシリーズ化されなければ人気につながらない――。この“負のループ”からウルトラマンは長らく抜け出せなかった。
ところが最近、ウルトラマン人気が復活を見せている。玩具やキャラクターグッズなどでウルトラマンを見る機会も増え、テレビシリーズ継続の追い風にもなっている。国内だけでなく、海外での盛り上がりも注目を集める。7月放送開始の「ウルトラマンアーク」は11言語に対応し、世界同時期放送・配信を実現した。
背景にはアジアを中心とした人気の高まりがある。中国ではウルトラマンのテーマパークやトレーディング・カードゲームが人気だが、その勢いは番組製作やライセンスを管理する円谷プロダクションの業績にもあらわれている。2010年代から2021年まで約30億円から50億円の間を推移していた同社の年間売上高は、24年2月期には100億円を軽く超える見込みだ。
ドロ沼裁判で全面勝訴
この突然の“変身”の理由は、どこにあるのか。まず挙げられるのが、経営の安定化だ。1963年に設立されて以来、日本特撮の“源流”の一つに数えられる円谷プロだが、特撮映画にかかるコスト高によって60年代後半よりたびたび経営難に直面。資本関係や経営主体も幾度か入れ替わるなどしたが、2010年に遊技機大手フィールズの子会社になると、ようやく経営は安定。14年には債務超過状態も解消した。
そのフィールズも一時、総合エンターテイメント企業を目指しM&Aを繰り返したが、パチンコ・パチスロ不況の到来などで、エンタメ戦略を効果的に進めることが出来ないでいた。実際、一度はグループ化した企業や事業を次々と手放すまでに至ったが、円谷プロだけは最後まで放さなかった。円谷プロの持つウルトラマンが“とてつもない財産”であると分かっていたのだろう。そして、その読みは当たった。
いまやウルトラマン関連事業はグループ経営を支えるほどに成長し、その存在の大きさは、フィールズが22年10月より持株会社の社名を円谷フィールズホールディングスに変更したことからも分かる。
実はこの間、現在のウルトラマンの快進撃を可能にした2つの重要な“事件”が起きていた。1つ目がアメリカでのウルトラマンの権利をめぐる裁判の決着である。タイの番組制作会社チャイヨーが“1970年代に円谷プロダクションよりウルトラマンの全権利の譲渡を受けた”と一方的に主張していたもので、90年代以降、日本や米国、タイ、中国を舞台に訴訟へ発展。しかし18年、ついに米国内の裁判で円谷プロが「全面勝訴」(20年判決確定)を勝ち取り、これでウルトラマン・ビジネスの世界展開に支障はなくなった。
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