「ポツンと一軒家」はコンパクトシティに逆行 社会学者が問題提起「高齢者の孤立化に対応しないと……」
「コンパクトシティ」構想
こうした地域政策は「コンパクトシティ」と呼ばれている。高齢化や過疎化が進む地域に散在する住宅を一カ所にまとめる住宅の集約、住宅地域と商業地域、施設を結ぶ交通の整備、住民が近隣住民との交流を深める地域コミュニティの形成などが主な柱だ。実際に新潟県柏崎市ではコンパクトシティ構想が進められており、既存の都市機能集積を活かした街の核作りや市街地の拡大抑制、適切な土地利用誘導などに取り組んでいる。
バラエティ番組に詳しい放送ライターもこう問題点を指摘する。
「『ポツンと一軒家』が田舎暮らしを過度に感動的に描写することで、解決すべき過疎化地域の課題をスルーしてしまう点が問題として挙げられます。番組では過疎化や高齢化、インフラの老朽化など地域の住民が直面する厳しい現実を真正面から取り上げることはほとんどなく、電線、ガス、水道などのインフラ維持やコスト負担、大地震など災害時の救援対策の問題からも目をそらしています。『ポツン』と暮らしている住民をどうすれば自治体の中心地に移住させることができるのか。番組のマンネリ化が指摘されるなか、今後はそういう取り組みも番組作りの中で期待したいですね」
先祖が守ってきた土地や墓、生まれ育った家への愛着を否定することはできないが、最近は南海トラフ地震の発生リスクが議論されており、日本列島の南海沿岸地域、特に四国や九州、関西地域を中心に大きな被害が予想されている。コンパクトシティ構想は日本の防災や減災策の重要な対策として注目されており、万が一の備えにもなる。
非常事態時に高齢者が「ポツン」と孤立することのないような社会的雰囲気を作ることもテレビの大きな仕事のひとつだろう。
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