中日、阪神の「ドラ1」が“トミー・ジョン手術”で次々離脱も…故障相次ぐルーキーにスカウト陣の“本音”は?

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スピードよりも希少性が高い“武器”

 ダルビッシュ有(パドレス)も、高校時代は少し投げればどこかを痛めており、そんな投手がプロで活躍するのは難しいのではないかという声もあったが、プロ入り後にはトレーニングの成果もあってか長く一線で活躍し続けている。逆に1年目に華々しいデビューを飾っても、2年目以降に低迷してしまう選手も多く、それを考えるとルーキーの1年目の結果や怪我で一喜一憂する必要はないと言えるのではないだろうか。

 またルーキーにかかわらず、これだけトミー・ジョン手術を受ける選手が増えていることによって、「選手の評価基準も変わってくるのではないか」とスカウトは話す。

「150キロを投げるピッチャーは珍しくなくなっていて、それくらいのスピードがあっても、他が悪ければ指名されない時代になりました。速いボールはたしかに魅力ですけど、それでも打たれたら意味がありません。それであれば、スピードは突出していなくても、コントロールとか変化球でしっかり抑えられる投手の方が故障のリスクも少なくて、長く活躍できる可能性もあると思います。そんな投手が今後評価されてくるかもしれませんね」(前出のパ・リーグ球団スカウト)

 現役の選手でも技巧派の石川雅規(ヤクルト)が長く活躍しており、加藤貴之(日本ハム)も二桁勝利こそないものの、ローテーションの中心となっている。コントロールや投球術を磨くことは、ある意味、スピードを上げるよりも難しいことであり、投手としての“希少性”も高いと言えそうだ。怪我なく長く活躍できるのはどんな投手なのか。ルーキーたちの相次ぐ故障が、そんなことを見直すきっかけにもなりそうだ。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮編集部

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