24時間体制で1体3時間、1日200体…インド全土から死者が集まるガンジス川「野外火葬場」潜入記
ガンジスでの水ごりは朝が多い
車で移動し、1時間ほどで旧市街の中心地に着く。道という道に人があふれ、犬もあふれ、時おり牛が寝そべっている。そんな光景も、迷路のような路地に小さな店がひしめく光景も堪能。夕方からプージャ(ヒンドゥーの礼拝儀式)を見に行き、東京ドーム5つ満杯になるくらいの人数(あくまで私の感覚です)が、200メートル四方(同)の中で蠢く人熱に圧倒され……の後だから、夜の8時半過ぎだった。ガートが連なり、チャイや花の売り子が数多いるガンジス川の川岸をそぞろ歩いて、火葬場へ行き着いたのは。
ガートとは、岸辺から階段状に川水に没している堤のことで、バラーナスには84カ所あり、そのほとんどが沐浴場となっている。夜なのに水ごりする人たちがちょこちょこいた。
暗いので、水はきれいとも汚いとも、いまひとつ分からなかったが、「赤ん坊の死体や牛の死体がどんどん流れてきて、悪臭が漂っている」などと言われるのは、ずいぶん誇張があると思うに十分で、少なくとも悪臭はしなかった。
「ガンガーでの水ごりはヒンドゥーにとって最も尊いこと。インド全土から来ていますね、ま、朝の方が多いですが」と説明してくれた後、Sさんがあまり喋らなくなり、歩みが重くなった。その先に煌々と炎が上がる火葬場があった。
あちらにもこちらにも橙色の炎が
「2か所ある野外火葬場のうちの1か所、マニカルニカー・ガートのようだね。運ばれてきた死者はまずシヴァ神を祀る寺院に安置され、それからここへ来る。ここでの火葬は肉体から魂を解放して、輪廻転生するための儀式なんだって」
と、前田くんがスマホをさくさく調べ、伝えてくれる。
火葬場内に立ち入ることに、Sさんも前田くんも積極的でなかったようで、私は一人で近づいて行ったのだが、「うわー」と何度声を上げたことか。階段上の通路の両側、あちらにもこちらにも橙色の炎が「ごおー」と音をたてて上がっていて、呆気にとられた。炎(すなわち火葬中の遺体)を取り囲む、遺族らしき人たちも相当数いる。あ、鉄の棒を手に、遺体がよく焼けるように働いている(と直感した)スタッフさんたちも。遺体を担架で運んできて、「これから焼く」感じのグループもいた。
スマホで写真を撮っていると、男の人がやってきて、
「写真ノー」
と怒られた。「ごめんなさい。つい」と応じると、なぜかその人は、「OK。いいよ」とすぐさま許してくれて、
「24時間焼いている。1体3時間、1日200体」と言った。
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