サウナではどこに座るべき?自宅でできる「究極の入浴術」は? お風呂のプロが解説する、最強の入浴方法

ドクター新潮 ライフ

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高齢者のサウナの入り方は?

 絶大なる温泉の健康効果。とはいえ、やはり都市部に住んでいると、そう簡単に温泉に行くことはできないでしょう。そうした事情もあり、いわゆるスーパー銭湯がはやっているわけですが、多彩な温浴が楽しめるスーパー銭湯での入浴法、特に高齢者が気を付けるべきこととは何でしょうか。

 たくさんの湯船があるスーパー銭湯では、お湯という「温熱刺激」に体を慣らすため、できるだけ刺激の少ない湯船から漬かるように心がけてください。高温の湯船やジェットバスなどは後回しにして、まずはかけ湯をしてぬるめの湯船から入る。

 また、先ほど温冷交代浴にはアスリートでの疲労回復効果が報告されていると紹介しましたが、高齢者に関して言うと水風呂はあまり推奨できません。たしかに「温」で血管が広がり、「冷」で収縮することによって血流は良くなります。しかし、動脈硬化が進んでいる中高年以降においては、急激な血圧の上下動は血管破裂や血管が詰まっての脳卒中、心筋梗塞を招きかねません。

 そして、サウナに入ることによる急激な温度差も心臓などに負担をかけるので、高齢者は高温のサウナは避けたほうが安全でしょう。したがって、サウナの“ひな壇”ではできるだけ一番下に座るようにしてください。熱気は高いところへ上がっていくため、ひな壇が一段高くなると温度は10度上がるといわれているからです。60度程度までのサウナであれば、それほど心臓に負担がかからないという医学的な研究があります。しかし、一番下の壇で60度でも、3段目では80度に達する計算になります。ですので、高齢者は上の壇は極力避けるべきでしょう。

「昼風呂」で深いリラックスを

 最後に、温泉はもちろんスーパー銭湯にも行く暇や余裕がないという人へのお勧め入浴術を紹介したいと思います。

 それは「昼風呂」です。日が明るいうちに、自宅の浴槽にゆっくりと漬かる。出た後しっかりと体を拭き、十分に水分補給をしてから真っ暗にした部屋で布団にくるまり数十分ゴロゴロする。入浴で血流が良くなった後に、暗くて静かで、刺激のない部屋でのんびり過ごせば、車のエンジンとブレーキに例えるとブレーキにあたる副交感神経が優位になり、えも言われぬ深いリラックス効果が得られます。そこに「昼酒」と同様、日中からちょっとしたぜいたくを味わえているという快感が加わって最高の気分を満喫できます。

 ただし、“リスク”がひとつだけあります。気持ち良過ぎてそのままずっと寝入ってしまう――。この点だけには注意してください。

早坂信哉(はやさかしんや)
東京都市大学人間科学部教授。1968年生まれ。温泉療法専門医。自治医科大学医学部卒業、同大大学院医学研究科修了。浜松医科大学医学部准教授、大東文化大学スポーツ・健康科学部教授などを経て東京都市大学人間科学部教授に。入浴の健康効果を医学的に研究し続けている第一人者。『最高の入浴法』(大和書房)などの著書がある。

2024年4月25日号掲載

特別読物「『お風呂』健康法をさらに最強にする『正しい温泉術』温泉・スーパー銭湯篇」より

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