【U23アジア杯・イラク戦】大岩剛監督の采配はどこがすごかったのか

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稀代の策士

 大会は中2日の連戦のためターンオーバーを採用せざるを得ない。そうした条件で、まずはグループリーグ初戦の中国戦は勝利が必要だ。そして「負ければ終わり」の準々決勝のカタール戦もベストメンバーで臨みたいのは当然のこと。

 しかし、五輪の出場権がかかった準決勝まで藤田、松木、荒木の3人同時のスタメン起用は隠してきた。準々決勝のカタール戦では松木が前半に警告を受けると後半はFW藤尾翔太と交代させた。

 イラクが主力のキャプテンを準々決勝のベトナム戦で警告2枚目から日本戦に出場できなかったことを振り返ると、松木の交代にも深謀遠慮がうかがえる。

 これら全てが五輪キップをつかむため、準決勝を勝ち抜くためのプランであり選手起用だとしたら、大岩監督は稀代の策士と言っていいだろう。

 後半は前線に人数を増やして攻勢に出たイラクに危ないシーンを作られた。その分、手薄なイラク守備陣を急襲して決定機も作ったが、決めきれずにイラクの息の根を止められなかったのは決勝戦への反省材料にすればいい。

心憎い采配

 それよりも気になったのは、初戦でエルボーから退場処分を受けたCB西尾隆矢を起用するかどうかだった。ほぼ勝利を確信できたと思う後半45分、4試合ぶりに西尾と、FW内野航太郎を起用した。心憎い采配である。

 今大会の決勝戦の相手はインドネシアを2-0で退けたウズベキスタンだ。グループリーグの相手に恵まれたとはいえ、ここまでの5試合で無失点というのは脅威である。そんな相手にどんな試合を挑むのか。そしてスタメンはどうするのか。今大会での大岩ジャパンのファイナルマッチが楽しみである。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮編集部

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