3人目の若妻はわがまま、家庭生活も満足していない… 不倫・再婚を繰り返す45歳夫を育んだ複雑な家庭環境

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結婚したのは「普通の女性」だけれど…“うっとおしい”

 同い年の祐子さんは「ごくごく普通の女性」だった。この人は「自分の基本的な指針となる」人だと彼は思ったという。

「両親と弟との4人家族で、お父さんは有名企業勤務、お母さんはパートをしながらの主婦。お母さんは料理上手で、お父さんはときどきDIYで棚を作ってくれたりする。そんなごく普通の家庭で育った祐子を好きになって結婚しました」

 27歳のときだった。結婚に踏み切ったのは彼女が妊娠したからだったが、そうでなくても彼女と結婚しただろうと彼は言う。結婚を機に彼女は退職したが、それもごく普通のことだと彼は感じていた。

「彼女は娘が生まれるとメロメロになり、数年間は自分で育てたいと。その後はパートで働くから、経済的には大変だけど一緒に乗り切ろうねと言っていました。幸い、当時、その会社は福利厚生が充実していたんです。住宅補助もあったし、社内での食材販売もあってスーパーより安かった。贅沢しなければなんとか暮らせていけました。妻の両親も近くにいて、いろいろ助けてくれましたし」

 何もかもうまくいっていると思っていたが、時間がたつにつれて、ごく普通の生活、常識的な妻に退屈するようになった。妻は腹が立つと黙り込む癖があった。

「わかるんですよ、妻は『夫を立てなければいけない』と思っている。新聞は僕に先に読ませるし、たとえば袋菓子みたいなものでも僕が開けない限り自分は手をつけない。娘にも『お父さんが先よ』とよく言っていた。彼女自身、眠くても夜中まで起きて僕を待っているわけです。僕はそういうことがうっとうしいし、男を立てるような教育は娘にはしてほしくないと言ったけど、妻は自分の両親がそうだったからと譲らない」

 いっそ妻が我慢できずに眠ってから帰ろうと、毎日のように終電で帰り、近所のバーで時間をつぶしていた時期がある。誰かが自分の犠牲になっているような生活がたまらなく嫌だった。

「そのバーで知り合ったのがバーテンダーのユキでした。彼女はかっこいいバーテンダーでね、酔っ払いは門前払いするし、店内で酔った客はごく自然に帰らせてしまう。私語は交わさないけど、いつもかっこいい女性だと思っていました」

強い彼女に惹かれて

 ある晩、珍しく客が途切れてふたりきりになったことがあった。彼がつい妻の愚痴をこぼすと、ユキさんは黙って聞いてくれた。

「今度、食事に行きませんかと誘ったら、彼女は『私の彼氏、ヤバい人だけど』って。ていよく断られたんですが、それ以来、ますます彼女のことが気になって……」

 半年ほどたったとき、ユキさんが「ヤバい彼と別れました」と言った。ヤバい彼は本当に存在したのかと彼が驚くと、「食事に行きましょう」とユキさんは笑ったという。徐々にわかったところによれば、「ヤバい彼」とは、母親の愛人だった。

「彼女は母親と折り合いが悪かったそうです。自立してからはほとんど接触がなかったのに、あるとき母親が愛人を連れて彼女に会いに来た。父親を裏切って愛人を作り、さらにそれを娘に見せびらかしにきた母に絶望したユキは、自ら母親の愛人に近づいたそうです。愛人は母と別れて彼女の部屋に転がり込んできたけど、『コイツが本当にどうしようもないヤツだった』と。ヒモみたいなものだったようです。暴力もふるわれたけど、彼女は空手をやっていたので彼を一発で沈めたこともあるって。彼女は僕よりいくつか年上でしたが、修羅場をくぐっているせいか、腹の据わり方が違っていましたね」

 そんな強い彼女に隼平さんは惚れ込んだ。それは妻と知り合ったころとはまったく違う感情だった。これが恋だと彼は確信したという。

後編【娘に紹介できない女性と3回目の結婚…愛情を結婚という形にしているのに、とにかくうまくいかない45歳男性の女性遍歴】へつづく

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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