さだまさしは「本当にオンとオフがない人」 異例のタレント本「さだまさし解体新書」から浮かび上がる人気の秘密

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

さだまさしの曲が訴えるものとは

――ファンはアーチストに似るということでしょうか。

宝福:さだは人と人との繋がりを大切にしていると思います。そして義理人情に厚い。自分ができることをすべて、義理人情を通してきちんとやると、それが自然と歌に乗って周りの人に伝わり、すごく良い循環になるのかもしれません。

 また「思い出暮らし」という曲には、「傷口から腐るあいつ 傷口から強くなるあいつ」という歌詞があります。何か嫌なことがあった時も良い面は絶対にあるということを、おそらくさだ本人はよくわかっていると思うんです。

 僕がこれを言うのは本当におこがましいのですが、バイオリン奏者になるさだ少年の夢(※)は破れたけれど、そのために今のさだまさしがあるわけです。思い通りに行く人生は絶対になく、そこで今の自分に何ができるかを考えた結果なのでしょう。(※3歳からバイオリンを始めたが東京芸術大学の受験を諦めた経緯がある)

 だからいろいろな人の人生を肯定できるし、そんな作品が多いのかもしれません。誰かに肯定されると、誰かを肯定したくなりますよね。もちろん人の心には潜在的な好き嫌いがあるかもしれませんが、見方ひとつ変えれば人はどんなことでも成し遂げられると、さだはいろいろな曲で訴えてるような感じがしますね。

さだまさしで世間の争いごとは減る

――「触媒」であり「1つの大きな傘」というのが、『さだまさし解体新書』から感じられた「さだまさし」であり、「どうしてこれほど人気があるの?」という素朴な疑問に対する1つのアンサーのようにも感じられました。

宝福:そう感じていただけてよかったです。僕の中では偉大なる「ストーリーテラー」でもあります。メロディーにはすごくクラシカルで雄大な曲もあるし、詩は本当に言葉が美しい。いろいろな方にもっともっと聞いていただきたい。ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞できたのなら、さだまさしも受賞できるんじゃないかと本気で思っています。

 さだはバイタリティと好奇心があって行動的だとお話ししましたが、なかなかそういう生き方はできませんよね。僕らは慣れない何かと対峙すると目を背けてしまうことが多々あると思います。でも、さだの歌のように目を向けて、「いや、慣れないものだけど良いところもあるんじゃないか」と探せるような人になることができれば……うん、世間の争いごとが減るような気もしますね。

――でもさださんご本人は「すごい人ですね」と言われたら、何と返されると思いますか?

宝福:「そんな大したもんじゃないよ」とか言うんじゃないでしょうか(笑)。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 4 次へ

[4/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。