さだまさしは「本当にオンとオフがない人」 異例のタレント本「さだまさし解体新書」から浮かび上がる人気の秘密

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さだまさしの視点とは

――他に印象的だったさださんの行動や言葉を教えてください。

宝福:車に乗っていた時、横断歩道をのんびり歩いている若い男性がいました。よく見ると、手押し車を押すおばあさんとペースを合わせて付き添っているんです。でも、渡り切ったらそれぞれ別方向に行ったので、身内や知人ではなかったのでしょう。その様子に気づいたさだは「ああ、いいな」とつぶやきました。

 また先日、頂き物の蝋梅の写真をInstagramに投稿した時は、「写真に撮っても匂いが届けられないのは惜しいな、いつか届けられるようになるんだろうなあ」と言っていました。そんな風に、周囲をとてもよく見ている瞬間や感覚の鋭さに触れた時、この人はすごいなと思います。

――ちなみにこの取材に際して、さださんから何かコメントはありましたか?

宝福:「迷惑かけないようにやります」と言ったら、「いくらでも俺に迷惑かけていいから、ビシっとかっこつけてやってこい」「『さだまさし研究してきました』みたいなこと言ってこいよ」と言われました(笑)。

さだまさしファンはなぜ優しいのか

――『さだまさし解体新書』では巻末のQRコードでさだ研の現役生たちによるエッセイなどを紹介しています。「さだ愛」はもちろん、さだ研という居場所と仲間への愛を綴った内容もあり、「さだまさしという傘の下に集まった」という印象を受けました。

宝福:他のファンの方々もそう思っているのではないでしょうか。ファンクラブの会報誌に、50周年の「4夜コンサート」(2023年6月~8月)で通し券を購入した方からのお便りが届きました。お隣の人も通し券だったので4回とも隣同士になり、最後はお友達になったという報告です(笑)。人それぞれの「さだまさし観」はあるものの、さだまさしという「触媒」のような存在を軸にして、各自の解釈がつながるポイントがどこかしらにあるのでしょうね。

――「にわか」ファンが冷遇されるジャンルもありますが、さだまさし界隈ではどうですか?

宝福:その傾向はないかもしれません。さだがコンサートのトークでよく話すエピソードに、ブライアン・バークガフニさんという教授が「日本語で『外道』という言葉が好きです」と話した、というものがあります。「外道」を「自分の道の他にも道があることを認めている言葉」と解釈していたという話です。

 僕個人の考えでは、さだの歌にもそんな風に「みんな違う」という部分がある。さだの曲の中にもいろんな主人公がいます。あなたの人生ではあなたが主人公、私の人生では私が主人公と歌う「主人公」という曲のように、さだファンの間では「みんなが主人公」という意識があるのかもしれません。

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