さだまさしは「本当にオンとオフがない人」 異例のタレント本「さだまさし解体新書」から浮かび上がる人気の秘密

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オンとオフがない「職業:さだまさし」

――『さだまさし解体新書』には研究論文と対談が6本収録されています。北山さんの音声研究(※)をはじめ、各自の専門分野を深く掘り下げているため、途中で「さだまさしの話」ではなくなっている論文もあります。(※第1章「さだまさしのアクセント研究 『秋桜』の順行・逆行分析から探る」)

宝福:そうなんです(笑)。たとえば、関沢まゆみ先生(国立歴民俗博物館教授・博士)の論文(※)は、さだの歌詞を民俗学の観点で分析し、折口信夫を引用するといった本格的な内容になりました。(※第3章「人生と老い、その豊かさ 生き直しの民俗学」)

――「さだまさし」をテーマにして広がる研究論文を読んでいると、「さだまさしとは何者か」と考えてしまいます。

宝福:歌手や小説家、アーチストなどいろいろな括りはありますが、間近で見ていると「職業:さだまさし」だなと思いますね。バイタリティにあふれていて、2夜連続コンサートの1夜目と2夜目の間に小説を2冊読んだりするんですよ(笑)。「昨日これ読んだんだけど、面白いぞ」と普通に、何事もなかったかのように言う。またそれが近未来のSF小説だったので、「知り合いの物理学者に送らなきゃ」とすぐに送る行動力もあります。

 いろいろな曲を書くには“入れるもの”がないと出せないと思いますが、その“入れるもの”の量が桁違いです。それでも古くからのスタッフによると「最近は全然入れてない」そうです。なら、昔はどれだけすごかったのか(笑)。

さだまさしはどんな性格なのか

――巻頭のインタビューでは、さださんご本人が「さだまさしを面白がって遊んでくれている人たちがいる」「僕は僕で『さだまさし』で遊んでるんで」と語っています。実はご本人も「さだまさしとは何者か」を考えている印象を受けました。

宝福:その可能性はありますね。昨年の「グレープ」(※)の復活、新アルバム発売とコンサートに際し、さだは「グレープの曲とさだまさしの曲はやっぱり違う」と言っていました。自分のことを客観的に見ていると思います。(※吉田政美とのユニット、1972~76年、2023年~)

――その客観性は生まれつきというか、そういう性格なのでしょうか?

宝福:僕がそこを語るのは僭越かもしれません(笑)。ただ、本当にオンとオフがない人なんです。ずっとあの「メディアに露出してるさだまさし」のままです。そう考えると、元からの性格なのかなとも思います。

――感情の揺らぎが細やかな描写で綴られた曲も印象的ですが、トークでは本音をずばりと口にする鋭さもあります。さださんは感情の振れ幅が大きなタイプなのでしょうか?

宝福:怒りなどの方向には振れない方ですね。昨年、さだに紹介されて薬師寺(奈良県奈良市)に行き、薬師三尊像のお身拭いをさせていただいた時、感動して泣きそうになったんです。そこにさだから電話があったので「泣きそうになっちゃいました」と言ったら、「そういう時は泣いていいんだよ」と温かい返事があって。些細かもしれない感情の揺れを膨らませることで、何度聞いても感動する曲を生み出しているのかなと考えています。

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