「俺たちはマジンガーZだ。俺が頭で、お前が体だ」 年上の“従兄弟”を盲信した男が手を染めた「横浜・深谷連続殺人事件」の暗すぎる闇

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「まごころ相談室」

 新井を“竜さん”と慕っていた高橋は、新井からは“たっくん”と呼ばれていたそうだ。その“たっくん”が新井に憧れの気持ちを持ったのは、新井から頼まれた仕事を手伝うようになってからだという。

「竜さんは当時、トラブル仲裁屋をしていて、男女間のトラブルや未回収の金の取り立てをやっていました。竜さんの指示で、集金や嫌がらせを手伝うようになって、憧れの気持ちを抱くようになりました」(高橋の証言・以下同)

 当時、新井がやっていたトラブル仲裁の仕事を、二人は「まごころ相談室」と呼んでいた。「男女間のトラブルを、真心込めて、感謝されるような形で仲裁する仕事」(同)だったという。そこで高橋は新井の指示を受け「離婚後のトラブル解決や追い込み業務」などという手荒い“真心”を尽くすなかで、新井への尊敬の気持ちを膨らませていった。

「ずっと新井さんについて行きたいと思いました。新井さんは“俺の言う通りにしてれば間違いないから”“俺たちはマジンガーZだ。俺が頭で、お前が体だ”と言っていました。私は自分で考えることもできないから、そうだなと思いました」

 新井に心酔した高橋は、この当時、胸に刺青を入れた。法廷壁面に備え付けられた大型モニターに映し出された、高橋の胸元の写真は、その中心部に漢字で“新井”と彫られていた。

 後編では、暴走する従兄弟二人組の凄惨な犯行の全容が明らかになる――。

後編【「深谷の叔父貴、殺してくれねえか、もう許せねえ」 心酔する“従兄弟”の命令で連続殺人犯になった男は、なぜ公判で“裏切った”のか】に続く

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。

デイリー新潮編集部

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