旧ソ連の荒野に咲く「魅惑のバス停」を一挙紹介…「鉄のカーテン」の向こう側にあった“ストリートアートの極北”とは

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世界的アーティストの“作品”も

 バス停造りには、ソ連出身の世界的アーティスト、ズラブ・ツェレテリも関わっていた。日本で言えば横尾忠則さんにバス停を発注するようなものか。

 そのバス停作品は、例えばアブハジアの道路上に突然現れる。視界に入れば絶対に凝視してしまいそうな、白地にところどころ赤いタイルが入った壺のような形の構造物。“こんなところになぜアート作品が?”と思いきや、それがバス停なのだ。ツェレテリがデザインした“アートバス停”のひとつだ。

 アブハジアの別のバス停は、波のようにも、シャコガイのようにも見える独特な造形。背面には緑、黄色、赤、青のタイルが貼られ、後ろから見ても美しい。これもツェレテリデザインだ。知らなきゃここにバスが来るとは思わず、写真だけ撮って通り過ぎてしまいそう。そんな芸術的で贅沢な作品が道路脇にポンとあるのだ。

 キルギスには巨大な鳩のオブジェが乗ったバス停がある。その鳩が正面から見ればキュート、後ろから見れば実に猛々しいのである。日本にあれば“珍スポ”として人気になっていたに違いない。

 星野さんは2016年のアブハジア撮影旅の際、移動中にこうしたバス停を見かけ、心をつかまれた。以来、旧ソ連の国々に行くたびにバス停を撮影。撮り溜めた作品をAPAアワード2024に出品したところ、「金丸重嶺賞」を受賞するなど高く評価された。

 また過去に撮影したものを多数収録した写真集「ソ連のバス停」(東京キララ社)も発売されている。

 なお星野さんによれば、訪れた数々のバス停はどこも時刻表はなく、その辺を歩いている地元民に時間を確認するか、人が集まってくるのを見て「バスが来る」と察知し待っていたという。

 ソ連のバス停、彼の地の揉め事が治まった暁には、ぜひ行ってみたいものである

※星野さんの作品など「APAアワード2024」受賞作品は4月30日~5月5日まで京都市美術館で巡回展が行われる

華川富士也(かがわ・ふじや)
ライター、構成作家、フォトグラファー。記録屋。1970年生まれ。長く勤めた新聞社を退社し1年間子育てに専念。現在はフリーで活動。アイドル、洋楽、邦楽、建築、旅、町ネタ、昭和ネタなどを得意とする。過去にはシリーズ累計200万部以上売れた大ヒット書籍に立ち上げから関わりライターも務めた。

デイリー新潮編集部

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