「プロ野球時代より責任は重い」「死ぬ気で頑張れば…」元ヤクルト選手がソニー生命社員になって思うこと

  • ブックマーク

「プロ野球時代よりも、責任は重い」

 ライフプランナーとなって2年目の20年は新型コロナウイルス禍に見舞われ、自宅待機、リモートワークの日々も経験した。

「あの頃は、電話での現状確認がメインの仕事でした。契約者さまに電話をかけて“体調はいかがですか? コロナは大丈夫ですか? マスクはありますか? 私たち保険会社といたしましては、今こういうことができます”といったことを説明させていただきました」

 コロナ禍が落ち着き、現在では新たな契約と、既存の契約者のフォローを両立させる日々が続いている。ライフプランナーとなってすでに5年が経過し、6年目に突入している。改めて鵜久森に、この仕事の楽しいところ、やりがいを尋ねてみた。

「お客様と会話することがいちばん楽しいです。とても責任のある重たい仕事でもあるので、“楽しい”というとちょっと語弊があるんですけど、“鵜久森さんが担当でよかった”と言われることがとても嬉しいです。お客様に何かが起きたときこそ、僕らが評価されるところなので、苦しんでいるときに“助かりました、ありがとうございます”というひと言をもらえるために、僕らはライフプランニングしていますから。責任は野球選手より重いですからね」

 プロ野球選手時代よりも、責任は重い――。この言葉にこそ、現役ライフプランナーとしての自負がある。

「みなさんそれぞれの事情があり、家庭環境も違います。その一つひとつに丁寧に取り組んでいかなければいけない仕事ですから、やっぱり責任は重大です。プロ野球時代も、1年1年一生懸命頑張ってきましたけど、今はさらにもっと必死に取り組まなければいけない。その思いは強くなっています」

 現役時代、まさか自分がライフプランナーになるとは微塵も考えていなかった。二度の戦力外通告を経て、現在は顧客の幸せを何よりも願うようになった。ひと足早く新たな世界に飛び出した鵜久森から、現役選手たちへのアドバイスをもらった。

「僕の個人的な考えですけど、野球だけをやっていても決して上手にならないと思います。絶対に野球以外の多くの人の意見を聞いた方がいい。野球界という小さな輪の中にいるのではなく、積極的にいろいろな人に会って、いろいろな考え方に触れた方がいい。それが結果的に野球のためになることも多いし、引退後にも役立つことになると思います」

 高校時代には「期待のスラッガー」として注目されてプロ入りした。けれども、14年間のプロ生活では結果を残すことができなかった。改めて反省の弁がこぼれる。

「僕の場合は、変に真面目過ぎて、練習のし過ぎだったのかもしれないですね(苦笑)。僕が失敗したのは、10回打席に立ったら10本のヒットを打ちたかったこと。もっと柔軟な考え方をしていたら、また違った結果になったのかもしれません」

 一拍の間をおいて、鵜久森は笑顔で言った。

「野球に関しては、いろいろ反省点はあるけど、ライフプランナーの仕事は絶対に失敗が許されないから、常にアップデートを怠らずに頑張っていきたいと思います」

 すでにスーツ姿が板についている。パソコン操作もスムーズに行っている。保険販売に必要な資格も取得し、保険や金融の知識も増えた。数百人を超える契約者の一人ひとりをフォローしながら、「保険のプロフェッショナル」としての日々を、鵜久森は今、懸命に生きている――。

(文中敬称略・前編【甲子園優勝校の4番打者は日ハム入団後、鳴かず飛ばず…心に沁みた同期入団・ダルビッシュの気遣いとは】のつづき)

長谷川 晶一
1970年5月13日生まれ。早稲田大学商学部卒。出版社勤務を経て2003年にノンフィクションライターに。05年よりプロ野球12球団すべてのファンクラブに入会し続ける、世界でただひとりの「12球団ファンクラブ評論家(R)」。著書に『いつも、気づけば神宮に東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(集英社)、『詰むや、詰まざるや 森・西武 vs 野村・ヤクルトの2年間』(双葉文庫)、『基本は、真っ直ぐ――石川雅規42歳の肖像』(ベースボール・マガジン社)ほか多数。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。