新入社員の「GW明け退職」に多くの企業が戦々恐々……それならば「新卒採用をやめます」と宣言してみては?

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進む人材の流動化

「新入社員はどうせすぐ辞めるから、最近はもう新入社員は採らないで、“第二新卒”的な人材を採る方向にシフトする会社も増えています。採用コストと育成コストがムダだから、こちらの方が合理的。ある程度、他社に育ててもらった人材を採った方がいい」

 採用にしても「今年から新卒採用やめます。即戦力の方のみ求めます」なんてやり方をし、高給を提示する大企業が出てもいいのではないだろうか。昔は「35歳転職限界説」があったが、最近ではネットのバナー広告でも「40代・50代の転職」を謳う広告を見かける。それだけ中高年の転職が当たり前になったし、人材の流動化が進んだということである。

 これは良いことではなかろうか。何しろ、転職が盛んでなかった時代は、部下が年下だと上司が気を遣い、部下もかつての後輩から使われる立場になることに複雑な思いを抱く。それまで、その年上社員は年下社員を呼び捨てしていたのに突然「さん」づけをするようになる。これは生え抜きが多い企業で発生するもの。しかし、転職してきた上司が年下だったり、自分が転職した先の上司が年下だったりしてもあまり気にならない。だからこそ、転職市場の流動化は好影響をもたらすのだ。ただし、あくまでも人が多く、仕事が多い都会の話である。地方都市ではあまり馴染まないかもしれない。

外資系企業がずっとやってきたことを

 先ほどの「新卒採用はせず第二新卒的な人材を採用する」発言だが、発端はリモートワークが増えてから5年目を迎え、その運用の仕方が話題になった時のことである。広告会社の管理職がこう嘆いたのだ。

「ウチの会社もリモートワークの快適さに慣れたのでこのまま続くとは思いますが、若手の育ちが遅いようにも感じられます。一応入社から半年は教育係がついて一緒に行動するようにはしているのですが、やはり直接コミュニケーションを取ったり、先輩の仕事ぶりを目の前で見たりすることで学ぶことって多いんですよね」

 こういった状況だと確かに新卒採用をいっそのこと辞めてしまうと発表し、その代わり経験者(年齢は特に問わず)を転職で好待遇にて迎え入れる、という発表を人気企業はしてしまってもいいかもしれない。ニュースやSNSで話題になるし、より優秀な人材を採用コストと教育コストをかけずに採用できるだろう。どうせ人は転職するのである。だったら「転職市場で大人気の会社の第一人者」といったポジションをさっさと取ってしまうのもいい。そう、外資系企業がずっとやってきたことを日系企業もやるのだ。ここまで新卒もすでにドライだし、企業も「他社に育ててもらえばいい」という方向に向かっていくと、「情」の採用はもはや不要である。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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