ヘンリー王子はなぜ米国で生活できるのか ビザの”謎“が全米で論争を呼ぶ納得の理由

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米大統領選の行方次第では

 米国のリベラルと保守が作った渦に巻き込まれているヘンリー王子。となれば、必然的に11月の米大統領選がさらに渦を大きくする。

 共和党候補となることがほぼ確定しているドナルド・トランプ氏は、以前からヘンリー王子とメーガン妃に批判的だ。今年3月には英メディアに対し、自身が大統領となった場合、ヘンリー王子のビザ申請書類に虚偽があれば「適切な行動を取らなければならないだろう」と語った。一部メディアはこれを「国外追放の可能性を示唆」というトーンで報じている。

 これを受けて、バイデン政権側のジェーン・ハートレー駐英米国大使は同月下旬、英メディアに対し「バイデン政権ではそんなことは起こらない」と語った。するとヘリテージ財団はこの発言を「政権によるヘンリー王子擁護」とする分厚い文書を提出し、改めて“バイデン政権の不透明感“を批判。ヘンリー王子のビザ申請書類の開示を強く求めた。

 ヘリテージ財団は「もしトラ」と大統領令の復活を想定した人材募集サイト「プロジェクト2025」を立ち上げ、保守派を政権中枢に送り込もうとするなど、トランプ陣営への接近が顕著である。ただし、トランプ陣営側は一定の距離を置いているという報道もある。

 ヘンリー王子が米国で“政争の具”にされるのではという危惧は、2020年の移住当時から存在していた。夫妻の側から政治に首を突っ込むことはあっても、巻き込まれた末の表立った騒ぎはレアケースだ。この訴訟を「小競り合い」と表現する米メディアもあるが、当初の危惧が目に見える形で現実のものになった感は否めない。

相変わらず不明なビザ種類

 騒ぎを大きくする要因の1つは、ヘンリー王子に発給されたビザの種類が不明という事実である。「A-1」ビザと推測する専門家は多く、ある移民専門弁護士は「A-1の上位ではないか」とブログに綴っている。「A-1」は外交パスポートまたはそれに相当するものを所持する層(日本では皇族や閣僚等)に発給されるが、訪米目的は政府関連の公式活動などで自国を代表してのもの。上位の「A-1 Head of State」なら訪米目的は不問で、「身元調査も甘い」らしい。

 また「並外れた能力または業績」を持つ人物に発給される「O-1」ビザという推測もある。業績とはヘンリー王子が創設した傷痍軍人のための国際スポーツ大会「インビクタス・ゲームズ」や数々の慈善事業が相当するそうだ。「A-1 Head of State」と同様、更新を続ける限り永住権(グリーンカード)を取得する必要はない。

 グリーンカード取得済ではないかという説もあるが、英メディアは移民弁護士の見解として、現時点でその可能性は低いと報じた。「通常の居住地」が「米国」に変更された書類に「永住権」の言葉が使われていないことがその根拠だという。英国籍を抜けて米国籍となる市民権取得はさらに可能性が低いものの、もし決断した場合は英国での称号を捨てる必要があるという報道も多い。

 ヘンリー王子夫妻の新しい公式サイト「sussex.com」が公開された2月には、子どもたち2人の姓が「マウントバッテン=ウィンザー」から「サセックス」に変更されたという報道もあった。父が「サセックス公爵ヘンリー王子」、母が「サセックス公爵夫人メーガン」なら、子どもも「サセックス」を名乗るという判断だ。とはいえ、これからも米国の「サセックス一家」でいるのなら、父の在留資格に関する”謎“は早めに解決しておいたほうが得策だろう。

デイリー新潮編集部

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