早くも「VIVANT」超え…「アンチヒーロー」衝撃の設定と伏線、考察合戦も
冤罪事件への憤り
海外ドラマに詳しい放送ライターがこう指摘する。
「アンチな弁護士を描いているという点では、依頼人が実際に罪を犯していることを知りながらも、法的なテクニックや弁護戦略を駆使して無罪にしようとする弁護士を描いた映画『The Devil's Advocate』(1997年)が知られていますが、内容的に近いのはNetflixで現在視聴可能な『How to Get Away with Murder(邦題:『殺人を無罪にする方法』)でしょう。2014年から2020年までアメリカのABCチャンネルで放送され、主演のヴィオラ・デイヴィスは同作でプライムタイム・エミー賞の主演女優賞を受賞するなど幅広い人気を得ました」
主人公のアナリーズ・キーティング(ヴィオラ)は大学教授で刑事裁判専門の現役敏腕弁護士。彼女はあらゆる策略を駆使して被告の無罪を勝ち取る授業「殺人を無罪にする方法」を開講している。同作シーズン1の第1話を見ると、その手順として(1)証人の信用を落とす、(2)新たな容疑者を提示する、(3)証拠を埋没させる、を教え「陪審員に膨大な情報を与えて疑念を植え付ける。これが勝つ方法」と学生たちに言い放つのだった。
「『アンチヒーロー』の第2話では証人として法廷に呼ばれた都立医科大学の中島教授(谷田歩)のウソを証明して信用を落としましたし、証拠として提出された凶器のハンマーについても中島教授と姫野検事(馬場徹)の癒着を暴いてケムに巻いてしまいました。こういうところは確かに似ていますが、『アンチヒーロー』は検察や警察による冤罪事件への憤りをストレートに描くことで、巨大権力機関に人生を奪われた弱い個人の姿をクローズアップしていくようですね」(前出の放送ライター)
ただ、さすがに殺人犯を無罪にしてしまう第2話の展開には「ほんとはやっちまってたけどそれは誰かのために仕方なくやったこと…? だとしてもだめだよ」「でっち上げも困るが隠滅もだめだろう」「なんで(新人弁護士の)赤峰くんがあのゴミ処理場に行ったのか、私の頭じゃわからない」「血のついた服をなぜとって来ないわけ? 犯罪者を野放しにするような弁護士を許してはだめだろ」など厳しい意見がネットに上がっている。
とはいえ、こうしたストーリーは先に挙げた「The Devil's Advocate」や「殺人を無罪にする方法」などですでに確立されているジャンルだ。飯田プロデューサーは公式サイトで「所詮人間が作り上げた『法律』というルールを、彼(明墨)がどう使い、どう利用していくのか。見てくださる方が、少しでも自分にとって大切な何かを思うきっかけになってくれたらと願っています」とアピールしている。
検察という巨大権力
第1話と第2話を見る限り、明墨が緋山の弁護を引き受けた理由は緋山を無罪にすることよりも、検察という巨大権力組織に打撃を与えることが最大の目的だったようだ。
また、明墨の事務所に勤める弁護士の赤峰柊斗(北村匠海)、紫ノ宮飛鳥(堀田真由)の変化と成長も大きな見どころだ。「アンチヒーロー」のテーマカラーは濃い紫色を指す「至極色」で、ときおり映像全体を覆う色として使われているが、そのワケは主人公・明墨の「墨」、赤峰の「赤」、紫ノ宮の「紫」を混ぜ合わせると至極色になるから、というのも凝っている。
「明墨が涙を流した墓に刻まれた『REIKO MOMOSE(モモセレイコ)』とは誰なのか。“桃瀬”だとしたら色繋がりで明墨の同僚という可能性も浮上しますね。また、緒方直人演じる獄中の男と近藤華演じる紗耶の関係性など分かりやすい伏線を置くことで謎がどんどん深まる仕込みも巧みです」(同)
自衛隊、警察など国家機関を英雄的に描いた「VIVANT」とは真逆に、検察に辛口対応の「アンチヒーロー」。今後、「VIVANT」にバルカ共和国外務大臣・ワニズ役で出演しクセの強い演技を披露した俳優の河内大和も登場し見せ場を作るようだ。「VIVANT」のような考察合戦がまた始まるのかー。
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