「ペアローン世帯」増加で、住宅ローン「団信」に熱視線が注がれる理由 がん保険よりも“圧倒的に割安”のカラクリとは
「団信自体を目当てに住宅ローンを組む人はいない」
しかし、3人に1人がガンになる言われる昨今、団信の充実は利用者にとっては有り難いが、貸し出す銀行にとって、負担が大きいのではないか――。ここからは前編に引き続き、住宅ローンアナリストの塩澤崇氏が解説する。
「団信が一般的な生命保険と比較して割安なのは事実です。理由はそもそも、保険金の支払い件数が少ないからなのですが、大きく3つの要因があります。1つ目は繰り上げ返済。日本人は皆さん真面目なので、定年の60歳前後で繰り上げで返済を終えてしまうケースが少なくありません。保険の対象となる残債がなければ、保険の支払金も発生しませんし、高齢者があまりいないのも特徴です。2つ目は、団信自体を目当てに住宅ローンを組む人はいないということ。団信は住宅を買うために言わば強制的に加入するものであって、団信に入るためにローンを組むわけではありません。その一方で、一般の保険は、例えばガン家系であるとか、健康に不安がある人が入るもの。3つ目は、家を買う人は若くて健康体な人がほとんどだということですね。以上のことから、団信の加入者構成が若く健康な世代に偏っているため、団信の保障は低コストにも関わらず非常にお得なのです。」
――団信のサポート範囲は、上乗せ金利を払ってでもなるべく手厚くした方がいいのでしょうか。
「上乗せ金利によって、実際の負担がどれぐらい増えるか計算すると分かりやすいと思います。例えば“がん診断で残債50%が免除”という団信が、0.1%の上乗せで“100%免除”になるとします。借入額が5000万円だとして、0.1%の上乗せだと、35年間の支払い総額が100万円増えることになります。これを月当たりに換算すると約2400円。もともと50%がついているのなら、がん診断を受けた時に受け取れる金額は最高で2500万円。残債がいくらの時に診断を受けるかによるので一概には言えませんが、カバーされる金額を考えれば、がん保険よりも割安です」
――りそな銀行の「ペア団信」もおすすめですか?
「実際の上乗せ金利が発表されていないので、現時点では正確な評価はできませんが、夫婦のペアローンの全額が免除となるわけですから、心理的な安心感は大きいでしょうね。“保険は安心を買うもの”ですから、そうした選択肢が増えるのは利用者にとってプラスになると思います。団信はローンの申し込み時しか入れませんから、例えばモゲチェックのような比較サービスを使って、じっくり吟味して欲しいですね」
現役世代の多くが初めて直面する「金利のある世界」。インフレ経済下では「持つ者」と「持たざる者」の格差が広がりやすいと言われる。「積み立てNISA」や「変動金利」、そして「団信」。今まで以上に私たちのマネーリテラシーが試されている。
前編【ついに住宅ローン「変動金利」が上昇へ! 住信SBIネット銀行が「短プラ0.1%アップ」でも、専門家が「いまこそ変動金利を有効活用すべき」と語る理由】からのつづき