ついに住宅ローン「変動金利」が上昇へ! 住信SBIネット銀行が「短プラ0.1%アップ」でも、専門家が「いまこそ変動金利を有効活用すべき」と語る理由

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具体的に、どれぐらい支払額が増える?

――変動金利が1%上がると、支払う金利はどれぐらい増えるのでしょうか。

「5000万円の残債があるとして、金利が1%上がると、35年ローンの支払総額は単純計算で1000万円増えることになります。実際には35年間ずっと同じ金利じゃありませんし、今これから借りる人でも、支払いの残り期間は35年より短くなっているので、あくまで概算ですけどね」

〇単純計算の概算値ではあるが、電卓を叩いてみた。
35年ローンで5000万円を借りて、変動金利が1%まで上がった時、トータルの金利支払額が1000万円アップ。これを35で割ると約28万5000円。さらに12で割ると約2万4000円。1か月あたりの負担増はざっくりこれぐらいのイメージに。1億円の“億ション”を買って変動金利が2%まで上がった場合だと、同じ計算式で1か月あたり約9万5000円の負担増に。実際の金額は期間内の平均金利と残債額によって変動するので、もう少し優しい数字になるのだろうが、インパクトのある金額であることに違いはない。

――変動金利が将来的に1%を超えるのであれば、固定金利での借り入れも検討した方がよいでしょうか。

「現在のフラット35の金利が1.8%ぐらいなので、“緩やかに1.0%前後まで上がる”という予想に立てば、変動金利の方がお得ということになります。今回の利上げサイクルで現状の固定金利と先々の変動金利の差が逆転する可能性は低いと見ていますので、私の意見は“変動が有利”となります。ただ一方で、金利上昇リスクを取れない人は固定金利のほうが安心でしょう。例えば、収入が不安定な自営業や法人役員の方が該当します。年収に対して借入額が多い方もです。イメージとしては、年収の7倍を超えると要注意ですね」

インフレ経済こそ、変動金利の住宅ローンを有効活用するべき

――これから自宅の購入を考えている人へのアドバイスをお願いします。

「日本人は伝統的に無借金を好む上、リスクをなるべく抑えようと株式投資にも消極的です。ただ、経済的な面で人生を豊かにしていくためには、個々人のマネーリテラシーが非常に重要。仮に生涯賃金3億円の人がいるとして、ざっくり生活費、住居費、教育費、老後費、と分けた時に、単純に4等分すれば住居費にかけられるのは7500万円ですね。賃貸か持ち家か、固定か変動か。我々はこの7500万円をどう使うのがもっとも利益的か、というゲームをしているんです。私は変動金利の住宅ローンこそ、給与所得がある人だけが使える“最強カード”だと考えています。このカードをうまく使うことで、ゲームを有利に進められる」

――使い方が重要になってくるわけですね。

「なるべく資産価値の落ちない物件を購入することと、手元に残った資金を有効活用することがポイントです。日本はこれから緩やかにインフレが進むと言われています。マンション価格が高騰しているのも、住宅ローンの金利が上がろうとしているのも、このインフレが一因。インフレ経済では現金の価値が低くなるんですね。日銀の言う“物価目標2%を安定的に達成”とは、言い換えれば“現金の価値が毎年2%ずつ安定的に減っていく”のと同義なわけです。つまり、資産の多くを現金のまま持っていると、インフレの負の影響だけを受けることになる」

――つまり、住宅費用はローンでまかなって、所得はなるべく投資に回すべきだと?

「今の利率なら、フルローンで借りて投資に回せるお金を残すべき。同じ理由で繰り上げ返済もオススメしません。金利が低水準な間は“お金に稼いでもらう”方が効率的です。手元に残ったお金を積み立てNISAやiDeCoに回す方がトータルの金銭的メリットが大きくなる。今持っている現金をインフレで価値の上がる“モノ”に変換しておくことで、金利上昇による負担の軽減が可能です」

 マンションも株式も、インフレ経済下においては「持たざるリスク」の方が大きくなるということ。ただ、頭では理解できたとしても、日本の将来の先行きが不透明な今、実際に高騰したマンションを35年ローンで購入するのは勇気が必要だ。後編では、時にそんな人々の背中を押してくれる住宅ローン付随の「団信」のカラクリを、新しいペアローンと共に解説する。

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