ついに住宅ローン「変動金利」が上昇へ! 住信SBIネット銀行が「短プラ0.1%アップ」でも、専門家が「いまこそ変動金利を有効活用すべき」と語る理由

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「住宅ローンはコモディティ」

 解説してくれたのは、住宅ローンアナリストの塩澤崇氏。住宅ローン比較診断サービスの「モゲチェック」を運営する傍ら、YouTubeやXなどでも変動金利の最新情報を発信。変動金利への関心の高まりもあり、最近はメディアから解説を依頼される場面も増えてきたと話す。

――住信SBIネット銀行の短プラ引き上げで、住宅ローン利用者は戦々恐々としていると思います。

「これまでメガバンク各行は、“マイナス金利の解除で短プラの引き上げを行うことはない”という姿勢を見せてきました。そうした中、低金利を売りにするネット銀行の大手が先陣を切る形で短プラを引き上げたのは、率直に言って意外でした」

――他のネット銀行やメガバンクも、今後相次いで短プラを引き上げることになるのでしょうか。

「追随する銀行もあるかも知れませんが、限定的と予想しています。今は誰でも、スマホで調べれば銀行ごとの貸出金利が分かります。つまり、各行の貸出金利が“ガラス張り”になっているのです。消費者はなるべく金利の安い銀行を選ぼうとするので、競争原理が働きやすい。どの銀行も“ババ”を引きたくないので、もうしばらくは他行の様子見をする期間が続くのでは」

――互いに牽制しあっているような状況なのですね。

「今や住宅ローンも、水や電気と同じくコモディティ化しているんですね。つまり、性能や品質が消費者から見て大差がないのです。銀行が住宅ローンで収益を生む仕組みはとてもシンプル。“調達金利”によって融資用の資金を集め、その調達金利に自分たちの利益分の金利を上乗せして、ローン利用者に貸し付ける。この“右から左にお金を流す”という仕組みはどこの銀行も一緒です。同じサービスなら利用者は当然、なるべく安く貸してくれる銀行を選ぶので、金利の引き上げは、ダイレクトに顧客離れを引き起こすことになります」

今後の利上げ幅を予想

――言い換えると、“調達金利”が上がった際には、“貸付金利”に価格転嫁されるわけですね。

「そうしないとローンを貸し出す銀行側が赤字になってしまいますからね。この“調達金利”を決定付けるのが、日銀が定める“政策金利”です。現時点では0~0.1%ですが、これが引き上げられると、各行とも調達コストを貸付金利に転嫁することになります」

――政策金利は今年、何%まで上がると予想しますか。

「政策金利を予想するのは本当に難しい。それは日本の経済状況そのものを予想することに等しいですからね。その上で、あえてお伝えするなら、“年内1回の利上げで政策金利が0.25%まで上がる”というのが私の予想です」

――来年になると、更なる利上げが待っているのでしょうか。

「金利を上げるというのは、経済を引き締めるということ。インフレ抑制効果がある一方で、経済にブレーキをかけることになる。日銀はまだまだ“景気刺激モード”であって、“インフレ退治モード”ではない。来年以降、さらに利上げを続けるとしても、経済の好循環が止まっていないか、その都度確認しながら実施することになり、ペースは緩やかになるはずです」

――最終的にゴールとなる利率、いわゆるターミナルレートは何%になると見ていますか。

「これも現時点で予想するのはかなり難しいのですが、仮に上昇が続いたとしても1%ほどでとどまるのではないかと見ています。ただ、変動金利で住宅ローンを組む場合は、余裕を見て2%まで上がっても返済できる家計設計にしておくと安心でしょう。35年間の長期返済ですので油断は禁物です」

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