春ドラマは「記憶喪失」「ミステリー」がたくさん…単なる偶然ではないテレビ局の思惑
視聴率アップを狙う
「木村拓哉(51)の『Believe』は4月25日スタートですが、公式ホームページには《手に汗握るサスペンスと人間ドラマが織りなす壮大な物語!》とあるので加えました。赤楚衛二(30)の『Re:リベンジ』は“リベンジ・サスペンス”、篠原涼子(50)とバカリズム(48)がW主演の『イップス』は“ミステリーコメディ”、北山宏光(38)の『君が獣になる前に』は“戦慄のノワール・サスペンス”です。ほかにも、サスペンスと公言こそしていませんが、前出の『アンメット』や『9ボーダー』、広瀬アリス(29)の『366日』(フジ・月曜21時)、長谷川博己(47)の『アンチヒーロー』(TBS・日曜21時)なども、それっぽい謎が筋書きの芯になっています」
なぜこれほどミステリーやサスペンスが並んでいるのだろう。
「各局がリアルタイム視聴率のアップを狙っているからです。視聴者による謎解き、いわゆる“考察”でSNSを席巻し、視聴者を巻き込みたいのです。『古畑任三郎』(フジ)や『TRICK』(テレ朝)など、スマホなどなかった時代のミステリードラマの名作は作品の出来映えや口コミが視聴率のカギでした。しかし、19年の『あなたの番です』(日テレ)や、その続編とも言える21年の『真犯人フラグ』(同)がSNSでの“考察”ブームを巻き起こし、昨年の『VIVANT』(TBS)で頂点に達しました。“考察”は視聴者を巻き込み、回を追うごとに視聴率が上がっていったのです」
見逃し配信も見込む
「VIVANT」の視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区・世帯)は初回こそ11・5%だったが、その後は右肩上がりとなり、最終回では19・6%を記録した。もっとも、1話1億円の制作費、超豪華なキャスティング、数カ月にわたるモンゴルロケなど、ほかではマネのできない作品だった。そして実際のところ、地上波のリアルタイム視聴率は下がり続けている。
「リアルタイム視聴率が右肩下がりでも、テレビ局は収益を稼がなくてはなりません。そこで重視されるようになったのが、TVerなど広告付き無料配信です。実は、ミステリー&サスペンスは配信数が稼げるのです。その要因は先ほどの“考察”にも繋がるのですが、謎解きをするためには筋書きの再確認が必要になる。そのために見逃し配信で過去の放送分を確認しなくてはならなくなり、配信数も上がるのです」
下手な考察ではツッコミもされるだろうから、念入りなチェックは必要だろう。
「何本もドラマを見ていたら記憶も曖昧になりますからね。このビジネスモデルは21年の『ミステリと言う勿れ』(フジ)で確立されました。視聴率は初回の13・6%が最高で、10・0%まで落ちたこともありました。一方、広告付き無料配信の再生数はフジのドラマの中では歴代最速で100万回を突破し、以後は雪だるま式に増え、最終回の直前には3202万回という驚異的な数字で民放ドラマ歴代最高を記録しました。23年公開の劇場版も興行収入が48億円の大ヒットとなりました。つまり、テレビ局は今後の生き残りのためにミステリードラマを作っているということです」
だからといって、これだけの乱立だ。柳の下にドジョウは何匹いるのだろうか。