“寅子はお月のもの。月経が人より重めでした…”「虎に翼」が生理を描くのは必然だった 打ち破る朝ドラのタブー

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生理が縮めた距離感

 孤立していたよねだったが、後に寅子たちとの距離が少し縮まっていく。その場面の話題が「生理」だった。

 寅子がよねに問いかける。

「一日も大学を休んでいないと言っていたけど、お月のものがきた時はどうしてるの?」

(よね)「別のどうもしない。血さえ漏れなきゃいいんだ」
(寅子)「頭やお腹は痛くならないの?」
(よね)「別に…」

 寅子は目を丸くして驚いた表情を見せる。

「そうなの? いいなあ。私はお月のものが始まると4日は寝込んでしまうの。始まる前から身体が重くて、頭が痛くて…」

 この寅子の話に他の女子たちも同調し、「私もです。肌も荒れますし…」などと“生理談義”に花が咲いた。

 第3週は法廷劇「毒まんじゅう」事件の“まんじゅう作り”を学生たちが寅子の自宅で再現する場面もあった。それぞれが抱える弱音や怒りを打ち明け合い、お互いの距離が近づいていった。

 その後の教室では、よねがいきなり寅子の足もとにひざまずき、そのアキレス腱のあたりを指で触る場面がある。

「三陰交。店のお姉さんたちに教えてもらった。月のものの痛みに効くツボらしい。多少は楽になるだろう」

 破顔一笑した寅子が叫ぶ。

「みなさん、お月のものの痛みに効くツボですって!」

 どのあたり?もう一度、私にも教えて、と周りに他の女子学生たちも集まってきた。

 心温まる「生理」をテーマにしたエピソードだ。

 このドラマの作者で脚本を手がけている吉田恵里香、プロデューサーの石澤かおる、演出の橋本万葉の各氏は、昨年、「生理おじさんとその娘」という単発ドラマでチームを組んでいた。男性が生理についてどこまで理解を表すべきなのか、男性が口にしてもいいのか。そんな意識改革を視聴者に迫るドラマだった。「生理」の問題を描くことを意識し、社会に一石を投じようとしていて、やはり大学の授業の題材としてドラマを扱わせてもらった。その描き方に、Z世代の女子学生たちがすごく共感していたのが印象に残っている。

「虎に翼」は、若い世代でも共感するようなポイントをさりげなく埋め込んでいる。そのひとつが「生理」。これまでタブーとされがちだった、女性ならではの苦難をどう描いていくのか。この点にも注目していきたい。

水島宏明/ジャーナリスト・上智大学文学部新聞学科教授

デイリー新潮編集部

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