日本を抜いてGDP世界4位に…それでもインドが今後ぶつかる大きすぎる壁
大卒者の失業率は29.1%
トータルのGDPは拡大しているが、1人当たりのGDPが2000ドル台にとどまっていることも気がかりだ。
高失業率が1日当たりGDPの伸びを抑えている。特に若者の就職難は深刻であり、失業率は25%近くに上っている。毎年1200万人の若者が労働市場に参入するインドにとって、仕事の受け皿づくりは喫緊の課題だ。
モディ氏は2014年の政権発足時から「メーク・イン・インディア」政策を掲げ、雇用吸収力の大きい製造業の育成を狙ってきた。だが、雇用状況はむしろ悪化している感がある。
国際労働機関(ILO)は3月29日発表の報告書で「インドの大卒者の失業率は29.1%で、読み書きをできない人(3.4%)の約9倍」と指摘し、雇用市場で生じている深刻なミスマッチに警鐘を鳴らしている。
世界銀行も同様の見解だ。4月2日発表の報告書で「インドなど南アジア諸国における雇用創出は生産年齢人口の増加に追いついておらず、経済成長率を高める『人口ボーナス』を無駄にする恐れがある」と危惧している。
大企業だけでは解決できない
インド政府は法人税の引き下げなどを行い、米電気自動車(EV)大手テスラや米アップルなどのグローバル企業の誘致に躍起になっているが、国内で大規模な雇用が創出される結果につながっていないのが現状だ。
インドが抱える「雇用なき成長」の問題は大企業だけで解決できない。そのため、同国の専門家からは、雇用創出に貢献する中小企業を育成せよとの声が上がっている(4月6日付日本経済新聞)。
インドの中小企業は非農業部門の約4割の雇用を生み出しているが、世界平均からみるとまだまだ低い。中小企業が銀行融資をあてにできないことや、税制面での不利などが災いしている。
だが、若者の窮状が続けば、旺盛な国内消費に対する大きな脅威となり、やがて経済成長を阻害することになる。政治の不安定につながる可能性も排除できないだろう。
深刻な水不足で企業活動に支障も
インド政府は各種インフラ投資に注力しているが、深刻な水不足も今後の経済発展にとって大きな障害だ。同国有数のビジネス都市であるベンガロール(バンガロール、ベンガルールとも)では、今年3月に水不足が深刻化し、企業活動に支障をきたすという危機が生じた。
インドは2019年時点で約6億人が深刻な水不足に直面しているが、大量の水を必要とする半導体製造などハイテク企業の誘致により、この問題はますます悪化するリスクが生じていると言わざるを得ない。
「第2の中国」として日本でも期待が高まるインドだが、今後、大きな壁にぶつかってしまうのではないだろうか。
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