嘘をつき続けた水原一平容疑者が土壇場で大谷翔平に明かした“本音” 臨床心理学の専門家が読み解く「依存症だけでは説明がつかない動機」

スポーツ 野球

  • ブックマーク

最後まで残る謎

 ならば水原容疑者はどうだろうか。もし銀行詐欺罪の犯行容疑が事実なら、全幅の信頼を寄せてくれていた“相棒”の銀行口座から大金を盗んだことになる。それも日本円で24億円超という桁違いの額だ。

 とはいえ普通の悪人は、ターゲットを定めて自分から被害者に接近する。詐欺犯は「こいつはカモだ」と騙す相手を決め、架空の儲け話などで金を騙し取ろうとする。だが水原容疑者は、大谷のため骨身を惜しまず働き続け、それゆえに2人は深い絆で結ばれていると思われていた。最初から24億円を盗むために近づいたわけではないはずだ。

 どうやら水原容疑者は「筋金入りの大悪人」ではないのかもしれない。「死刑になりたかった」と供述する殺人犯とは異なり、起訴状に書かれた彼の転落プロセスや動機は、理解可能な部分も多い。一部の報道によると、水原容疑者は大谷から銀行口座の開設を依頼され、暗証番号などを知っていたという。では水原容疑者の犯罪は「魔が差してしまった善人による犯行」と見なしていいのだろうか──?

「知人が巨額の現金を預けている銀行口座に自由にアクセスできる状態だったとしても、大多数の人は不正送金など行わないでしょう。なぜ水原容疑者は、いつかは発覚する可能性が高い稚拙な犯行に及んだのか、その謎を説明するため、アメリカの捜査当局はギャンブル依存症の問題を指摘しました。確かに水原容疑者の犯行は、依存症の視点で7割から8割くらいは説明できると思います。しかし『なぜ不正送金を行ったのか』という謎の全てを解明できたとは思えません。謎は依然として残っています」(同・碓井氏)

水原容疑者の本音

 一部の報道によると、水原容疑者は司法取引に応じるため、裁判は短期間で終了する可能性があるという。その場合、なぜ水原容疑者は不正送金に手を染めたのかという根源的な疑問や、水原容疑者の持つ精神的な“闇”は解明されない可能性が高い。

 嘘に嘘を重ねてきた水原容疑者の“人間性”を考える重要なポイントとして、碓井氏は彼の嘘に注目したいという。

「水原容疑者の犯行が悪質なのは、大谷選手の素顔を知る立場にあったため、彼が金銭に頓着しないという性格を知り抜いて実行したところでしょう。『会計検査のない企業で働いている経理担当者』といった状態だったはずで、やりたい放題だったのだと思います。私が注目したいのは彼が最後に『自分の嘘と口裏を合わせてくれ』と頼んだところです。ひょっとすると水原容疑者は『大谷選手が稼いだ巨額の収入のうち、何割かは自分の働きによるものだ』と心の底では思っていたのではないでしょうか」

 これまで自分は献身に献身を重ねてきた。確かにギャンブルの負け分は巨額だが、あなたの収入なら返済は可能だろう。大金持ちなんだから、それくらい自分のためにしてくれてもいいじゃないか──こんな“本音”が水原容疑者の心の底にはあったのかもしれない。

皮肉な状況

「水原容疑者はソウルで『自分の嘘に協力してくれ』と大谷選手に懇願しました。嘘をつき通し、捜査の手を逃れるのだという強い意思を読み解くことも可能です。ただ『今後は一緒に嘘をついてくれ』という言葉に、彼の“本音”が含まれていたのだとしたら、極めて皮肉な状況だったと言えるのではないでしょうか。日米のマスコミは基本的に『水原容疑者は土壇場になっても嘘をつき続けた』と報じました。しかし、ひょっとすると最後の最後で水原容疑者は“本音”を大谷選手に吐露したのではないかとも思うのです」(同・碓井氏)

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。