「亜細亜大学」中国人教授“消息不明”事件 拘束情報のウラで囁かれる「著書の問題部分」と「反スパイ法」の点と線

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「反スパイ法」改定の余波

 紛争実例だけでなく、范氏は母国についても〈(日系企業は)「法」が支配するのではなく、「権力」が支配する超大国といかに付き合うかという問題に直面する〉(同書より)と客観的な視点で書いていた。しかし、これら記述が中国側の神経を逆撫でしたことは容易に想像できる。

「范氏は似た内容の本を他にも出しており、それらを読めば、中国企業とのビジネスや中国への投資には“注意が必要だ”と考えるのが一般的。つまり以前から、范氏は中国当局の“ブラックリスト”に載っていた可能性がある。不動産バブルの崩壊などで経済失速が鮮明となる中国において、共産党政権の“正統性”を担保した成長神話も陰り、いまや政権基盤そのものが揺らぎ始めている。そのため近年、習近平政権は経済へマイナスとなる言動の取り締まりを強化していると聞く」

 とはいえ、范氏の一連の本が世に出たのも「日系企業の駆け込み寺」として活躍したのも10年以上前の話とされる。それがなぜ、いまになって「拘束」となるのか。

「中国で反スパイ法が制定されたのは14年だが、昨年に改定され、これまでの“政治犯”重視から、経済スパイ活動などの摘発にも網を広げる根拠を得たという。虎視眈々と窺っていた“要注意人物”への拘束・尋問の機会をようやく掴み、今回、実行に移した可能性が指摘されている」(同)

 日本政府の対応に注目が集まる。

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