常にトイレが気になって…「人生で4~5回漏らしました」 “バレないパンツ”を開発した難病社長の切実な思い
トイレのない観光船での危機
とはいえ、難病を抱えながらの暮らしは決して楽ではない。”ピンチ”が来たらすぐトイレに駆け込めるように、常にトイレの場所を気にする生活。歩いているときもコンビニやカフェの位置をチェックし、もしものときはトイレを借りる。また電車などの公共交通機関は、潰瘍性大腸炎の患者にとって漏らすリスクのある空間のため、洞本氏は常に車で移動している。車内でピンチが来ても、すぐに、最寄りのトイレを借りに駆け込むことができるからだ。
レジャーでも、観光バスはもってのほか。「観光バスは怖くて乗れません。例え高額な費用を払ってでもタクシーに乗るか、レンタカーで”安心”を買っています」と洞本氏は言う。
ある夏に花火大会で観光船に乗ったとき、特に焦りを感じたそうだ。洞本氏は船にトイレがあることは事前に調べていたので、「余裕だろう」と安心して乗り込んだ。ところが、乗船後に「えー、この船にはトイレがついておりません。ですが、30分間の乗船ですので……」というアナウンスが聞こえてきた。
「それ聞いただけで『まずい……何だかお腹が痛くなってきたかも……』と思いました。脳と腸は相関性があり、脳からの『まずい』という信号で腹痛が起こることもあります。そのときは、必死で花火に集中し、お腹から意識を逸らすことで乗り切りました」(洞本氏)
腸の疾患は外見からはわかりづらく、日常生活で困っても誰も気付いてくれない。その観光船の船長も、まさか洞本氏が人知れずパニックに陥っていたとは気付かなかっただろう。
「1日20回下痢をしていた時期は、外にも出られない状況でした。『まずい!』と異常を感じたときには時すでに遅しでわずか1分すら我慢できるかできないか。家の中でも漏らす事も。さらに困るのは、うかつにオナラができないこと。腸が腫れている時はセンサーが狂うので、オナラのつもりでも、うんちが出てしまう厄介な病気なのです。症状のひどい時期は外出しないよう気を付けてきましたが、それでも人生で4~5回は漏らしたことはあります」
“腹弱さん達の人生が好転”
百貨店で2年間働いた後、ふたば書房のインテリア事業に従事するため、京都本店へ異動になった。2000年には、ふたば書房の雑貨事業部「ANGERS(アンジェ)」のオンラインショップとして、EC事業部「アンジェ web shop」をローンチさせた。
「その後、ふたば書房から『アンジェ web shop』の営業権を譲受し、独立しました。その後、業種問わずいくつかの会社を立ち上げ、今の自分があります」
関西人として笑いを大切にする文化、百貨店時代に培われた先義後利の精神、オンラインショップ時代に培われた顧客目線のネット販売や商品作り。その全てがOMAPANに凝縮されている。
「今年の1月に公式サイトでOMAPANを販売開始してから、『長距離の車移動も安心してできるようになった』などの嬉しいレビューをいただきました。OMAPANによって、世の腹弱さん達の人生が好転しているのを感じています。うんち漏れに気付かれるのを防ぐということは、大袈裟ではなく人生を守るということです。もし漏らしたのがバレたら、一生引きずりますからね」
どんな逆境もチャンスに変える洞本氏のポジティブ思考は、ビジネスパーソンとしても見習うことがありそうだ。
前編【「実際に漏らして開発しました」 “うんちを漏らしても気付かれないパンツ”誕生秘話】からのつづき