「とんねるず」武道館ライブ決定に歓喜の声 “芸人の余技”をはるかに超えていた歌手活動を振り返る
見事に作り込まれていた曲
1985年にリリースされたムード歌謡テイストの「雨の西麻布」はオリコン週間5位の大ヒットとなり、とんねるずは人気歌手の仲間入りを果たした。その後、彼らはさまざまなタイプの楽曲をリリースするようになった。
「ガラガラヘビがやってくる」「がじゃいも」などの子供向け楽曲から、「情けねえ」「一番偉い人へ」などの社会派メッセージソングまで、とんねるずは幅広いジャンルの楽曲を巧みに歌いこなし、歌手としても大成功を収めた。90年代以降は、とんねるず名義の活動の代わりに「野猿」「矢島美容室」など別ユニットでの活動も行っていた。
とんねるずの楽曲に共通しているのは、悪ふざけと真面目さが奇妙に同居しているところだ。楽曲のコンセプトや歌詞の一部がふざけていることもあるし、音楽番組に出るときの彼らは必ずと言っていいほどコミカルなパフォーマンスに終始していた。
だが、曲自体は見事に作り込まれていた。いまやアイドルプロデューサーとして時代の寵児となった秋元康の作詞が、とんねるずの音楽活動の方向付けに大きな影響を与えている。
歌手としての輝きは失われていない
また、何よりも歌手としての2人のポテンシャルが高い。長身でスタイルのいい2人は、真面目に歌ってもふざけても絵になる格好良さがある。木梨は器用で歌唱力が高い。
石橋は純粋な歌の上手さでは木梨にやや劣るものの、派手な動きや表情で観客を惹きつける天性のパフォーマー資質がある。それぞれが強い個性を持ちながら、歌手として並んで同じ曲を歌うときには見事な調和を見せる。音楽活動をこれほど高いクオリティでこなせるお笑いコンビは後にも先にもいない。
とんねるずの音楽は、企画物であると同時に本格的でもあるような、ほかに比べようがない独特のものだった。彼らにとっては初めからふざけることと真剣にやることが表裏一体だったのだ。今後の音楽活動でもそれは変わらないだろう。
すでに還暦を超えた2人だが、歌手としての輝きはまだ失われていない。今年の武道館ライブはとんねるずの新たな伝説の幕開けとなるだろう。