男性の5人に1人が配偶者からのDVを経験 「妻に皿を投げつけられ、涙が止まらなかった」2年かけて離婚も“37歳で貯蓄ゼロ”という「弱者男性」の現実
男性の5人に1人が妻からDVを受けている
物を投げられるほどの暴力を受けるケースは限られるとはいえ、妻から言葉の暴力を浴びている男性は少なくない。男女平等参画局の調査によると、男性の5人に1人が配偶者からのDVを経験している。
にもかかわらず、山本さんのように配偶者と別離できた男性の割合は、同じDV被害を受けた女性の2割にすぎないというデータもある。
また、DVを受けた男性はわずか22%しか誰かに相談できていない。女性は約半数が相談できているのと比べ、大きな差がある。
背景には、相談するとバカにされる・男らしくない・出世に差し障るなど「社会が男性に求めるもの」との葛藤がありそうだ。
そんな山本さんも、友人や職場には相談できず、第三者である私を頼った。そして、誰にも明かさないまま調停離婚した。周囲には、円満離婚だったと話している。
そんな山本さんが公で発信できるのが「男性専用車両」への賛同なのだという。というのも、男性専用車両は、自分が直面した問題に触れることなく、男女不平等を訴えられる
テーマだからだ。
傷ついた経験を公に晒すメリットがない
「自分の弱みを見せても、いいことがないんですよ。別に女性と違って同情されないし、モテないし。これからも前の奥さんのことは話したくないですね。でも、婚姻費用のこととか、男性への不平等について言いたいことはあるんです。だから、(そこで代わりのトピックとして扱うのが)男性専用車両なんですよ」
自分が傷ついた経験を公に晒したくない。晒すメリットもない。だが、これまでに受けた仕打ちを語りたい。そのとき「男性専用車両」は身代わりのテーマとなってくれる。
実は、日本弱者男性センターが1日限定で男性専用車両を運行したとき、ネットの反応では「これとは関係ないけれど、女性からこういう被害を受けた」と、体験を語りだす姿が見られた。
弱者男性への差別を感じる誰もが、男性専用車両を最大の課題だと認識しているわけではない。ただ、男性専用車両は、誰もが弱者男性としての生きづらさを語りやすくする、媒介の役割を果たしているのだろう。
そう考えると、些末に見える差別への言及も、多面的に見えてくる。映画館のレディースデー、パート求人広告の男女比率への訴えは、もしかすると3K労働が男性に偏っていることや、生活保護の受給しづらさ、男性の自殺者やDV被害者の多さなど、ビッグ・イシューを語り始めるための、口火なのかもしれない。
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『弱者男性1500万人時代』(扶桑社新書)では、①男性の弱者性を明らかにする②弱者男性に対する誤解を解く③「弱者男性が求める支援」を提案する、という3つの目的に沿い、現代日本で「弱者男性」と呼ばれる人々の実情を詳らかにしている。
前編【4人に1人が自認する「弱者男性」の生きづらさ 事件の被害者でも「50代男性」が“かわいそう”と思われない決定的な理由】からのつづき