「とめてくれるなおっかさん」「昭和枯れすゝき」から自作のセーターまで “型破り”な作家・橋本治のユニークな展覧会が開催中
権威にこびない姿
「ものすごく頭の良い人。だけど、勉強家という印象はない。好きでやったことの延長に作品があるという感じ」と言うのは、今回の企画展の編集委員であり、出版社勤務時代には担当編集者として橋本さんと伴走した経験のある作家の松家仁之(まさし)さん(65)だ。
松家さんが懐かしそうに語ってくれたエピソードに、権威にこびない橋本さんの横顔がある。
「2002年、橋本さんは、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』で『小林秀雄賞』の第1回受賞者に選ばれました。きっと喜んでくれると、勇んで電話をかけたんですが、“どうしようかなあ。だってこれもらうと小林秀雄について何か書かなきゃいけないんでしょ”と反応が芳しくない。説得してようやく承諾してもらいました」
受賞を渋った橋本さんだが、その後、賞に応える形で『小林秀雄の恵み』を上梓。
義理堅い人なのだ。
一方で、2005年『蝶のゆくえ』で柴田錬三郎賞を受賞した折には、子どものように喜んだという。
「きっと小説家として評価されたことが心の底からうれしかったのでしょう」(松家さん)。
多芸多才の人、橋本治。そのマルチな“表現”をこの機会にぜひご堪能いただきたい(会期は6月2日まで)。