水原一平容疑者のアドレナリンが出るタイミングに注目…病的な嘘つきになって、最後は破滅した真相
アドレナリンの違い
水原容疑者のプロフィールにも似たところがある。通訳を務めていただけあり、コミュニケーションの分野では専門家と言っていいだろう。大谷の片腕として社会的信用も高かった。
「ギャンブルは太古の昔から人間を狂わせてきました。ギャンブル依存の歴史を文献研究などで遡ると、ヨーロッパではローマ時代、日本なら平安時代には存在していたことが分かります。依存症だった著名人も多く、例えば作家のドストエフスキーはギャンブルに多額のお金をつぎ込みました。主人公がルーレット賭博で身を持ち崩していく『賭博者』という作品を残しており、こうしたことから誰もがギャンブルに依存する可能性があることが分かります」(同・岩波氏)
とはいえ、ギャンブル依存症の患者より、ギャンブル愛好家のほうが人数は圧倒的に多いのも事実だ。「年に1回、競馬の有馬記念だけ馬券を買う」という人は珍しくない。だが、ギャンブルで全財産を失った知り合いがいる人は稀だろう。
「日常生活に支障を来さないギャンブル愛好家と、破滅まで突き進むギャンブル依存症の患者さんを分かつものは何なのか、私は『どの場面でアドレナリンが出るか』に注目したいと思います。ご存知の通り人間は興奮するとアドレナリンが分泌され、それが生む高揚感の虜となって依存症が進行することがあります。ギャンブルで勝った瞬間にアドレナリンが出るのは普通でしょう。一方、ギャンブル依存症の患者さんも最初は勝ってアドレナリンが出ていたと思いますが、それが次第に『ギャンブルができるという状況』でアドレナリンが出るように変わっていったのではないでしょうか」(同・岩波氏)
ハイ・センセーション・シーキング
競馬で大穴を当てたり、麻雀で役満を達成したりすれば、アドレナリンは出る。負ければアドレナリンは出ない。一攫千金の夢から醒めて冷静になり、無駄金を使ってしまったと後悔する人もいるだろう。
ギャンブル依存症の患者は、「競馬場やパチンコ店に足を踏み入れた瞬間」からアドレナリンが出る。ギャンブルができることに快感を覚えるため、究極的には勝とうが負けようが構わない。ギャンブルを続けることが目的となり、手持ちの資金が乏しくなれば、友人に嘘をついて借金を重ねたり、犯罪に手を染めて金を手に入れる──。
「HSS(High Sensation Seeking)は日本語でも『ハイ・センセーション・シーキング』と呼ばれていますが、強い刺激を追い求める人を指します。HSSの人はギャンブルのもたらすスリルに夢中となり、依存症になる可能性があるでしょう。注意欠如・多動症(ADHD)の人も衝動の抑制が困難な傾向が認められるので、ギャンブルにのめり込むと止められないと言えます。また破滅に向かって行く自分に酔う人もいます。こういうタイプは返済不能の借金を作ってしまっても、ギャンブルを続けてしまいます」(同・岩波氏)
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