我流より「丁寧な準備」を大切に “NHKの顔”と呼ばれた人気アナ・鈴木健二さんの「気くばりと工夫」

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2億円以上を納税

 娯楽の感覚を大切にした。78年に始まった「歴史への招待」は鈴木さんの講談のような名調子で人気番組に。

「クイズ面白ゼミナール」の大ヒットに伴い82年には著作の『気くばりのすすめ』がベストセラーに。83年分の長者番付によれば2億円以上を納税している。同書はこれまで約400万部売れた。日常の言葉遣いや礼儀作法の大切さを平易に説き、短い文章で具体的な例を挙げて語りかけていた。

「“わたくし”と切り出せばその後の言葉が自然と整うと教えて下さったことを思い出します」(下重さん)

3年連続で紅白司会に

 83年から3年連続で紅白歌合戦の白組司会を担当。84年、歌手引退を表明していた都はるみの歌唱後にアンコールを促そうと「私に1分間、時間を下さい」と言ったのは名文句とも気くばりに欠けるとも賛否両論。

番組を分かりやすく、面白く工夫した先駆者

 56年に入局した元NHKアナウンサー、山川静夫さんは思い出す。

「気くばりの本も紅白も話題になりましたが、それ以上に鈴木さんは内容を損なわずに番組を分かりやすく、面白く工夫した先駆者です。職場で私は鈴木さんの机の向かい側。本が壁のように積んであり時々月が昇った。鈴木さんが立ち上ると、おでこと頭が見えたのです」

 88年に59歳で定年退職。請われて民放の番組に出演したが合わず政界からの誘いも固辞した。熊本県立劇場、青森県立図書館の館長を歴任。旧制高校時代、障害のある戦災孤児との出会いが心の底に残っており、障害者支援を地道に続けた。

 90歳を超えても執筆意欲は衰えず、戦中を振り返った本を上梓している。3月29日、老衰のため95歳で逝去。

 肩書や過去の成功に執着しなかった。04年に75歳で公職を離れると自身をフリーターと呼んでいた。

週刊新潮 2024年4月18日号掲載

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