【五輪予選】左エルボーという「報復行為」で日本は窮地に 「感情をコントロールできない」選手に代表の資格なし

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小久保の安定感

 0-1とリードされていること、長身選手が多いことも、手数をかけずにクロスから活路を見出そうとしたのかもしれない。

 ただ、こうした攻撃に日本もたびたびピンチに見舞われた。そこで存在感を発揮したのがGK小久保玲央ブライアンだった。前半42分のベイヘラム・アブドゥワイリ(9番)のヘディングシュートはパンチングでクリア。前半45+1分のジュー・ユエ(5番)のロングシュートは両手でサイドへ逃げた。後半1分にはカウンターからGKと1対1の決定的なピンチを迎えたものの、シュートを左足でストップしてからキャッチして日本を救った。

 小久保は移籍したベンフィカでは出場機会が少ないことから、U-23日本代表では鈴木彩艶の控え選手だった。しかし、この日のプレーを見ると前述したファインセーブだけでなく、鈴木にはない安定感もあった。

 例えばパンチングの技術だ。前半45+1分のロングシュートは両手の平で確実にサイドへ逃げた。中国のアーリークロスに飛び出したシーンでは、フィスティングで遠くに弾き飛ばすなど、プレーの選択に迷いがない。後半4分にはカウンターに対して躊躇うことなくペナルティーエリアから飛び出してクリアした。

次戦も不安

 1月のアジアカップでは中途半端なパンチングから失点を繰り返し、相手のスルーパスに独走状態になりながら、前進しそうでバックステップを踏んで飛び出すのが遅れて冷やっとしたシーンの多かった鈴木。バックステップはホームの北朝鮮戦でも見られただけに、癖になっているかもしれないと思った。

 しかしながら小久保は、パンチングにしてもペナルティーエリアを飛び出すプレーにも迷いは見られない。見ていてこの安心感は鈴木にはないものだし、たとえ失点したとしてもチームメイトも納得できるものではないだろうか。

 パリへの戦いは始まったばかり。大岩ジャパンの収穫はまず初戦で勝点3を獲得できたことに尽きる。そしてGK小久保が日本を救ったこと。10人対11人の劣勢になりながら、スタメンの選手はもちろん交代で起用されたCB木村誠二や前線のMF藤尾翔太、MF佐藤恵允らも与えられた仕事を遂行したと思う。

 ただ、まだ1試合が終わったに過ぎないのも事実。19日にはUAE戦が控えている。短期決戦での、1人少ない試合の消耗度は計り知れない。そうした意味でも西尾の軽率なプレーは責任重大である。それをどこまでチームとして取り戻せるのか。好材料はキックオフ時間が中国戦とは2時間30分ほど遅いことだろう。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮編集部

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