「去年は“海外治験”で530万円稼いだ」“現役チケラー”が打ち明ける「治験の醍醐味」と「健康被害よりも重大なリスク」とは?

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醍醐味は「人間関係」

――治験で印象に残っていることはありますか。

「治験の醍醐味は“人間関係”だと思っています。期間中は他人との共同生活になるわけですが、自分が普段生きている中で絶対に関わることのない人たちと生活を共にするんです。2018年に初めて治験に参加した時はもう、衝撃的でした。今でこそ、そういう人は少なくなりましたけど、当時一緒に治験に参加した人たちの80%以上は社会不適合者みたいな、やべぇ奴らだったんです」

――そんな人たちと短期間とはいえ、一緒に暮らすのは大変そうですが……。

「観察している分には実害はありませんからね。特に治験だけで生計を立てているような人の中には、“本物”がいます。例えばアルミホイルを電子レンジで温め続けてボヤ騒ぎを起こすとか、参加の枠を巡って足を引っ張り合ってケンカするとか。スクリーニング検査に落ち、逆上してスタッフを脅迫する奴なんかもいました。彼らは治験に進めないと収入が絶たれてしまうので必死になるのは分かるんですが…。いや、決してそれが目的で参加してるわけじゃないですよ。私もそこまで性格が悪いわけではないです。ただ、観察対象としては面白い」

――副作用とか、健康被害はなかったのでしょうか。

「治験に参加すると、毎回1人ぐらいは肌に斑点ができてしまったり、血液検査の数値が悪くなったりして、途中離脱する人がでてきます。ただ、私はこれまで一度も自覚症状も出ていなければ、血液検査などで異常が出たこともありません。むしろ、私が真のリスクだと感じているのは、健康被害ではないんですよ」

最悪の事態を想定すべき

――他に、どんなリスクがあるのでしょうか。

「法律を犯すリスクです。私が特に怖いのは、出入国を何度も繰り返しその度に収入を得ていることが、アメリカの移民法に抵触したと見なされ、いざ取りたくなった時に永住権を取れなくなってしまうことです。そもそも、有償ボランティアという仕組み自体がちょっとグレーなんですよ。報酬を貰える一方、ボランティアなので就労ビザは不要。とはいえ、治験で生計を立てている場合は就労と言えなくもない。海外当局の判断1つで強制送還されるリスクだってあるわけです。もしそんな履歴がついたら、自由に海外旅行をすることもできなくなってしまう」

――世界各地でノマドワーカーとして働く木野さんにとっては死活問題では?

「ですので、なるべくそう見なされないように言い訳ができる準備はしていますし、いざという時は弁護士を雇う用意もある。私はそこまで最悪の事態を想定したうえで小遣い稼ぎをしています。YouTubeなども含めて、最近のメディアは海外治験を不用意に煽り過ぎだと思いますね。治験に興味がある人は、健康被害を気にするより、もっと制度そのものについて、自分で勉強した方がいい。お金に釣られて安易に参加すると、思いもよらない事態に巻き込まれる可能性があります」

 新薬の開発にとって、なくてはならない治験。その裏には、一口に“高額報酬”だけでは語れない、それぞれの人間模様があった。

前編【入院8泊9日で「120万円」も 高額報酬で話題の「海外治験」は本当に安全なのか? 担当者が明かす日本人向け治験ならではの特殊事情】からのつづき

デイリー新潮編集部

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