要介護リスクを29%低減! 日本が誇る最強の健康法「お風呂」は何がすごい? 最適な温度をプロが指南
正しい入浴法
このような歴史を持つ日本人にとってお風呂に入るのは当たり前のこととなっていますが、逆に言うと当然の習慣であり過ぎるため、学校で「入浴法」が教えられることはありません。その結果、せっかくの最高の健康法である入浴を生かしきれていないケースも見られます。その人の年齢や抱える症状によって、より効果的なお風呂の入り方があるのに、なんともったいないことでしょうか。そこで、ここからは「正しい入浴法」を紹介したいと思います。
例えば冷え性の人。先ほど説明した入浴の「7大健康効果」の中でも、何といっても温熱作用は最大のものであり、冷え性の人は熱めのお風呂に入りがちです。しかし、この入浴法は誤っています。42度以上の熱めのお風呂に入ると温熱作用が長続きしないからです。
たしかに42度くらいの少し熱めのお風呂に入ると、体温が一時的に1~1.5度上がり、手足の冷えも解消されます。体温が36.5度だった人は、38度まで上がって体は温まるわけです。ところが、これは人体にとっていわば異常事態です。従って、早く体温を下げて元の状態に戻ろうとし、発汗によって熱を放出しようとする。その結果、一気に体は冷えてしまいます。
「攻め」と「受け身」の汗
実際、40度のお風呂に入った場合と42度の場合の風呂を出てから30分後の体表温度をサーモグラフィーを使って調べたところ、40度のほうが体表温度が高く保たれていたという実証実験があります。従って私は、冷え性の人には40度のお風呂に漬かることを勧めています。よほど体が冷えているのでなければ時間は10分程度で十分でしょう。
次に、ダイエットを考えて半身浴を楽しんでいる人。上半身がお湯に漬かっていないため、上体から出てくる汗が可視化されていっぱい汗をかいているような満足感を得られますが、実は全身浴のほうが汗をかいています。ただ、全身浴の場合、文字通り全身がお湯の中に入っているため汗が流れ出ているのが見えないだけなのです。つまり、半身浴のほうが痩せられるという考え方には根拠がありません。
そもそも、入浴による発汗は「受け身の汗」です。運動した時の発汗は脂肪を燃焼させるなどした結果の「攻めの汗」であるのに対し、入浴はほとんどエネルギーを使っていません。「メッツ」という運動強度で言うと、安静時が1メッツ、散歩が3.5メッツで、入浴は1.5メッツ。散歩よりも安静時に近いわけです。
入浴による発汗は、お湯から熱をもらって汗が出ているに過ぎません。ですから、汗が出て一時的に体重は減りますが、水分を補給すればほとんど元に戻るため、入浴はダイエットには向いていないといえるでしょう。
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