要介護リスクを29%低減! 日本が誇る最強の健康法「お風呂」は何がすごい? 最適な温度をプロが指南

ドクター新潮 ライフ

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「こんなに安価で手軽な健康法はない」

 体を温めることで血流が良くなり、体の隅々にまで栄養分が運ばれ、同時に老廃物の回収もスムーズに行われる。

 また、温めることでたんぱく質でできている靭帯が柔らかくなり、関節の動きが滑らかになって痛みが和(やわ)らぐ。

 さらに、静水圧により体が締め付けられ、とりわけ下半身のむくみが取れる。

 そして、浮力によって陸上で感じていた重力による緊張から解放されリラックス効果が得られる。宇宙に行かずに重力からの解放感を味わえるのですから、やはりこんなに安価で手軽な健康法はありません。

 加えて言えば、毎日入浴するという習慣そのものが、生活のリズムを整え、要介護リスクを下げることにつながっているのです。

 これほどの健康効果がありながら、冒頭で説明したように日本以外の国では湯船に漬かるという行為はあまり習慣化していません。一体なぜでしょうか。

日本の入浴文化

 映画「テルマエ・ロマエ」で改めて知られることになったように、古代ローマでは、有名な「カラカラ浴場」をはじめとする公衆浴場が広く親しまれていました。いまで言うスーパー銭湯のような存在だったのでしょう。1回の入浴料は数十円から高くても400~500円程度でした。

 しかし、キリスト教が入ってきてお風呂に入ることが快楽的として敬遠され、また疫病が大流行したこともあって、公衆浴場に行く、すなわちお風呂に入るという習慣が廃(すた)れていったといわれています。

 対して日本では、まず水資源が豊富な上に、火山の国でもあるため温泉に恵まれているという好条件がそろっており、「温かいお湯に漬かる」という機会が比較的身近にありました。加えて、「沐浴(もくよく)」や「禊(みそぎ)」という宗教的な事情もあり、温泉などで湯船に漬かる習慣が根付いていったのだと考えられます。

 江戸時代には庶民の間で銭湯に入ることが広まるなどして日本の入浴文化は育(はぐく)まれていきました。そして昭和の高度経済成長期に入ると、各家庭にお風呂場が設けられ、銭湯に行く手間をかけずに入浴できるようになり、一般大衆にも毎日湯船に漬かる習慣が定着。こうして日本は世界に冠たる「入浴大国」となったのです。

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