主人公が記憶喪失に…生見愛瑠「くるり」は韓流ドラマを真似ているのか

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韓流ドラマと記憶喪失

 記憶喪失は韓流ドラマのお家芸。日本での韓流ドラマブームの口火を切ったNHK「冬のソナタ」(2002年、日本ではNHKが2004年に放送)も記憶喪失を抜きにしては語れない。

 主人公のチュンサン(ペ・ヨンジュン)は交通事故で記憶を失い、別人のミニョンとして生きる。しかし、2度目の交通事故に遭い、チュンサンとしての記憶を取り戻す。事故に遭うたび、記憶が失われたり、戻ったりした。

 韓流ドラマはほかにも記憶喪失が物語のカギを握る作品が数え切れないほどある。「冬のソナタ」と同じくチェ・ジウ(48)がヒロインを務めた「天国の階段」(2003年)もそう。

 チェが演じた大学教授の娘は、金持ちのお坊ちゃまのボーイフレンドと幸せに暮らしていたものの、嫉妬心に燃えた義妹に車で轢かれ、記憶を失う。義妹はそれで満足せず、チェが死んだことにしてしまう。強烈なストーリーだった。

「弁護士の資格~改過遷善」(2014年)は冷酷で非情な弁護士が交通事故で記憶喪失になったが、法律の知識は失わず、正義の人に変身する。「サイコパス・ダイアリー」(2019年)は証券会社のダメ社員が交通事故で記憶を失い、自分が殺人犯だと思い込んだ。

 まだまだ数え切れないほどある。記憶喪失ドラマの総数は日本のタイムリープ作品以上にあり、1つのジャンルと言える。

記憶喪失の源流は「赤いシリーズ」

 ただし、「くるり」が真似ているかというと、そうではない。このドラマを制作している大映テレビがつくり上げた作風を韓流ドラマが追い掛けた形なのだ。

 大映テレビが制作し、山口百恵さんが主演したTBS「赤いシリーズ」の第3弾である「赤い運命」(1976年)はこんな物語だった。1959年の伊勢湾台風によって、検事(宇津井健さん)の妻(岸田今日子さん)が生まれたばかりの娘(百恵さん)と一緒に行方不明となる。

 妻は大災害によって記憶喪失になり、百恵さんとは生き別れた。百恵さんは養護施設で育つ。この施設で火事が起こり、百恵さんが検事の娘だという証拠はほかの女児(秋野暢子)のものと入れ替わってしまう。

 百恵さんは粗野な男(三國連太郎さん)の娘ということになってしまった。やがて男は殺人を犯すが、担当検事が宇津井さん。やがて百恵さんは実の父が宇津井さんだと知るが、養父を支え続けた。記憶喪失、出生の秘密、殺人、まるで違う立場の実父と養父。韓流ドラマを思わせる要素がズラリと並んでいた。

 とんでもないストーリーのようだが、出演陣に当時のスターが揃った上、監督は高倉健さんの遺作映画「あなたへ」(2012年)などを撮った降旗康男さん、脚本はTBS「ウルトラセブン」(1967年)などの佐々木守さんだったから、面白く、骨太のドラマになった。大災害がもたらす悲劇を描き、親子を結び付けるのは血か育ちなのかを問い掛けた。

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