5000円で台本募集…無断盗用&間違いだらけの「遭難系YouTube」が乱発されるワケ
1本5000円前後で台本募集
どうしてこんなことになっているのか。
そのヒントをクラウドソーシング(企業や個人が、インターネット上で業務を発注したり請け負ったりすることのできるマッチングサービス)で見つけた。
クラウドソーシングサイトで「YouTube 遭難」と検索してみると、台本執筆者を募集する案件がいくつもヒットする。条件を見てみると1本(6000~7000字ほど)につき5000円前後が相場のようだ。応募資格に「登山の知識があること」と書かれているものが多いが、その知識がどの程度チェックされているのかは不明。そもそも、執筆者を募集している動画制作者本人に登山知識があるのかどうかも不明だ。
台本の執筆要項を見ると、「このチャンネルを参考にしてください」とURLが張られている場合が多いことに気づく。多くの案件でその参考チャンネルとして挙げられているのが、「山岳遭難ファイル」というYouTubeチャンネルである。
そっくりなチャンネルが続々と…
「山岳遭難ファイル」は、遭難系チャンネルのなかでは登録者数・再生回数ともにトップクラスで、この世界では大手といえる。その運営者に連絡を取ってみると、以下のように語ってくれた。
「当チャンネルを始めたとき、山岳遭難をアニメーションで表現する動画をメインで扱うチャンネルはほとんどなかったと記憶しています。その後、当チャンネルの再生数が大きくなってきたころから、当チャンネルとサムネイル構成やチャンネルアイコン、動画構成などが非常に似たチャンネルが増えていったように感じます。極端なものでなければ、動画構成などを参考にする行為自体を否定的にとらえているわけではありません」
「山岳遭難ファイル」が動画の投稿を開始したのは2023年5月。同じ年の9月から似たようなチャンネルが登場し始め、現在では私が把握しているだけでも20以上の遭難動画チャンネルが存在する。そしてそのほとんどが、判で押したように同じ作りになっている。
「山岳遭難ファイル」には過度な煽りは見られず、良心的な運営がされている印象だが、その後に続くチャンネルでは、サムネイル画像の扇情性が無視できないほどにエスカレートしている。
すなわち、「成功したチャンネルのフォーマットコピー+クラウドソーシング利用による大量生産+クリックを呼び込むための過度な煽り」、これが遭難動画の爛熟した状況を生んでいるのではないだろうか。
一方で、ある遭難動画チャンネルがウェブサイト売買サイト上で売りに出されている事実も発見した。人気テーマをコピーしてチャンネルを立ち上げ、ある程度の規模に育ったら売り抜ける。そんな構図も浮かんでくる。
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