小学生が医大へ向け猛勉強、世帯月収の4割が教育費…出生率0.72人という「超少子化」を招いた韓国の「私教育問題」
大峙洞キッズたちのロイヤルロード
大峙洞の名門塾には全国各地から受験生が集まるため、大峙洞の名門塾入試のための勉強を教える「セキ(セキとは子という意味)塾」も登場した。自分の体重の3分の1にもなる重いカバンを背負って塾を転々とする小学生や、大学受験対策を始めなければならない中学生、夜明けまで眠れないほど不法な授業を受けなければならない高校生たちはここ大峙洞の主人公で、いわゆる「大峙洞キッズ」と呼ばれる存在だ。
近年、大峙洞の塾では小学生を対象にした「大学医学部入試準備クラス」が旋風ともいえる人気を呼んでいる。小学生医学部クラスでは小学校3年生の時から高校の数学課程の微積分を教える。中でも英語専門の幼稚園から小学校医大入試クラス(塾)を経て自私高(自立型私立高校、名門大学進学率の高い超難関高校)に入学する進学コースは、大学医学部を目標とする大峙洞キッズたちのロイヤルロードだという。
ソウル市江西区に居住するキム・ヨンウン氏は、中学校3年生の長男の塾通学のために、この大峙洞への短期間の引っ越しを検討している。学校で成績トップという彼女の長男は現在の自宅近くの最も大きな塾街である木洞で3つの塾に通っているが、夏休みを利用して大峙洞塾の集中講義を受けることを考えている。
「平日は木洞の塾に通って、週末だけ大峙洞にある塾に通っています。大峙洞までは往復2時間近くかかるので、毎回車で送り迎えする主人も大変ですが、息子がとても疲れていて……。今度の夏休みには大峙洞で集中コースを受けなければならないので、家から通うより塾の近くの部屋を借りて住むようにしたほうがいいと考えています」(キム氏)
老後の準備ができない
大峙洞の塾街の不動産屋はキム氏のように子供の塾のために引っ越しをしようとする教育ママたちが行列をなしている。特に夏休みと冬休みには1ヶ月から3ヶ月の超短期契約が急増する。ここで不動産屋を運営するパク氏によると、超短期契約の賃貸料は一般的な賃料より、50%も高いのに物件が足りないくらいだという。
「人気の高い個室が二つある物件の相場は月200万ウォン程度から始まるが、最近は医大ブームも重なり、休みが近づくと物件を見つけるのが大変になっている。なので、経済的に余裕のある家庭では休みの1ヶ月前から早めに契約をしていたりもする」(パク氏)
ごく普通の共働き夫婦であるキム氏の家庭は、1ヶ月の世帯収入1000万ウォン(約110万円)のうち、4割程度が2人の子供の教育費に消えてしまう。キム氏が続ける。
「各種の塾代をはじめ、子供たちが学校でくじけないよう、息抜きとして休みのたびに海外旅行も行かなければならないなど、絶えずお金がかかります。子供の教育のおかげで貯金など老後の準備は全然できていません」
少子化で学生数が急減している韓国。かたや、私教育費はむしろ着実に右肩上がりとなり、21年以降、毎年、過去最高を更新している。尹錫悦政権は、私教育費の節減のため「塾など、学校の授業外で学ぶような内容を入試問題に出題することを禁止する」という「キラー問題排除案」を発表した。しかし、効果は薄く、23年度の私教育市場は前年比で4.5%の成長を見せ、市場規模で27兆1000億ウォン(約2兆9800億円)に達した。
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