結成16年「尼神インター」の解散は前向きに捉えていい…4年前に別れを告げていた“芸人としての武器”

エンタメ 芸能

  • ブックマーク

「ブス」という武器が不要になった誠子

 2020年に誠子が本名の「狩野誠子」名義で出版した著書『B あなたのおかげで今の私があります』(KADOKAWA)を読むと、彼女がこれまでの芸人人生の中で時代の変化を敏感に感じて、それに対応してきたことがわかる。

 彼女は学生時代に男子から陰で「ブス」と呼ばれていたことにショックを受け、内向的な性格になってしまった。お笑いの面白さに目覚めて芸人の世界に入ると、ブスを名乗ることが人を笑わせるための武器になることに気付き、好きな仕事に打ち込んで充実した日々を送るようになり、性格も前向きになった。

 だが、大阪から上京してからは、時代の変化と共にブスいじりをされる機会も少なくなり、むしろ「かわいい」「笑顔が素敵」などと褒められることも増えた。本書の最後には、もはや芸人としてブスという武器を必要としなくなった彼女が、自分の中で「B」と名付けていたブスに別れを告げる場面が出てくる。

2人のやりたいことが少しずつずれていった

 その後、誠子はますます素直に自分を出せるようになり、個人での活動が増えていった。ネタの中でやっていた「イイ女」風のキャラクターとも違う形で、自分の見せたいものをのびのびと表現するようになった。

 一方、相方の渚は見た目も生き様もワイルドなところがあり、昔ながらの芸人らしい芸人というタイプ。性格もキャラクターも誠子とは正反対で、そのコンビネーションが絶妙だったのだが、こちらもだんだんとソロでの仕事が増えていった。その中で、2人のやりたいことが少しずつずれていったのだろう。

 誠子自身も最近のインタビューの中で「コンビとしてできることはやり切った」という感覚があったから解散を選んだ、という趣旨のことを語っていた。

 それぞれが自分の道を選んでいるという意味で、尼神インターの解散は前向きに捉えてもいいのではないかと思う。

ラリー遠田
1979年、愛知県名古屋市生まれ。東京大学文学部卒業。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家・ライター、お笑い評論家に。テレビ・お笑いに関する取材、執筆、イベント主催など多岐にわたる活動を行っている。お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めた。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり 〈ポスト平成〉のテレビバラエティ論』(イースト新書)、『逆襲する山里亮太』(双葉社)『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)など著書多数。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。