記者が見たプロレスラー・曙 大仁田厚との電流爆破デスマッチで負った火傷の痕を隠し続けたワケ
「試合中は度を過ぎないで」
曙のファイトスタイルは、デビューとなる、グレート・ムタ戦(2005年8月4日。主宰は「WRESTLE-1 GRAND PRIX 2005」)から、刮目すべきものがあった。場外に飛ぶと見せかけてのスライディング・キック、巨体を小回りさせてのスクール・ボーイetc。同年8月21日、全日本プロレスでの初戦を迎えると、TAJIRIの放つ毒霧を、水中ゴーグルで受け止めるトンチも披露した。翌2006年1月からは新日本プロレスのリングにも上がり、3月にはIWGPヘビー級王座にも挑戦。同年7月の同王座決定トーナメントにもエントリーし、8月には「G1 CLIMAX」にも特別参戦した。
「G1」では4代目タイガーマスクとのタッグで、覆面姿の「ボノ・タイガー」に変身していた。翌年は『G1 CLIMAX』の本戦にも出場。開幕の永田裕志戦では、倒れた永田を踏みつけ、土俵入りのポーズを披露したかと思えば、永田選手のパフォーマンスである敬礼まで先取りして見せてていた。
個人的に印象に残っているのは全日本プロレスのマットだ。ロープを掴みながら、倒れた選手を両足で踏みつける。(ロープを掴みながらの行為は反則になるため)レフェリーがカウントを取ると、両手をパッとロープから放してしまった。瞬間、場内はドッとウケた。何の支えもなく曙が選手の腹に直立する形となり、全体重がかかることになったためである。ファンを楽しませるツボを知っている、頭の良さがあった。
試合後、タッグパートナーに釘を刺したことがあった。コスプレ戦士、長島☆自演乙☆雄一郎とタッグを組んだ時だった(2011年6月14日。vs大谷晋二郎、橋本大地。主宰はZERO1)。この日、2人は人気漫画「ワンピース」のコスプレで入場。曙は主人公ルフィに、プロレスの試合が2戦目の自演乙はオカマ戦士、ボン・クレーに仮装した。嬉々として大谷の得意技の顔面ウォッシュや、武藤のシャイニング・ウィザードを真似る乙に、試合後、曙はやんわりと言った。
「楽しいのも良いけど、余り試合中は度を過ぎないで。プロレスは闘いなんだから……」
[2/3ページ]