華原朋美「芸能界にしがみつきたいとは思っていない」 自身の楽曲への“辛口評価”と今後の展望から見える意外な素顔

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「tumblin' dice」は「そっとしておいて」、「I’m proud」首位の現状には葛藤も

 それにしても、メガヒットを連発したORUMOK RECORDS時代の楽曲や、何度かの復帰を経て歌手活動に注力しているユニバーサルミュージック時代の楽曲は多数ランクインしているのに対し、’98~’03年に在籍したワーナーミュージック時代の楽曲は、「Love Destiny」(第48位)以外ほとんど入っていないのが気になる。特に、’98年に発表したアルバム『nine cubes』はヒットシングル「tumblin' dice」「here we are」が収録され、当時26万枚(オリコン調べ)以上ヒットしたのにもかかわらず、現時点でSpotifyの再生回数が1万回未満の楽曲ばかりで、上位の人気曲とはあまりに対照的だ。

「これは正直、あまり時間をかけずに作られていて……。周囲からも、“『tumblin’ dice』を今聴くのは厳しいね、”という意見があり、私もごもっともだと思います。今、新しいファンも聴いてくださっているなかで、ここに入っている曲をコンサートで歌って、万一、“華原朋美って、こんなんだったっけ?”ってガッカリされるのも嫌なので。今後、歌い直す機会があるならば、またセットリストに入れる可能性もありますが、現時点ではそっとしておいてください(笑)。

 でも、当時の勢いでヒットしてしまった『tumblin’ dice』よりも、(アルバムの中の1曲である)『Love Destiny』が多く聴いていただけているのは、私の気持ちが届いているのかなと思います。レコーディングのときも、切ない気持ちに感情移入して歌えたんですよ」

 確かに、この「Love Destiny」は彼女の歌声の魅力が詰まったバラードなので、今後さらに人気が出るかもしれない。ここで改めて、ランキング全体についての感想を尋ねてみると、

「やはり、歌手としては、デビュー間もない『I’m proud』を追い抜く曲が出ていないという悩みはありますね(苦笑)。それ以降も、いっぱいいい曲を歌ってきたはずなのに、やはり同世代の方たちにとっては、あのころの恋愛模様とか、幸せな一面を感じていたいという人が大半なのかもしれませんね。でも、アルバム曲の『summer visit』がこれだけ聴かれている点で、このデータは十分信頼できるものとして満足しています!」

「別の人生を切り拓いていくことも大切」。描いている夢とリスナーへのメッセージ

 現在の華原朋美は、今後の全国ツアーに向けて気持ちが前向きになっていると語る。

「昨年末の関東でのツアーは、メドレーのコーナーが新鮮だったので、今年も新たな試みを見つけていこうと思っていて。今は、たびたび他のアーティストさんのライブを観て勉強しています。息子のiPadの履歴を見ると、HIKAKINさんの動画が出てくるので、やはり今の時代に合った作品も届けたいですね。

 そして将来的には、夢を持つ10代までの子に、私ができることを教えていきたいです。私は、芸能界にしがみつきたいとは思っていないんですよ(笑)。これまでの経験を生かした別の人生を切り拓いていくことも大切だなと思います」

 最後に、サブスクでのリスナーに向けてメッセージをお願いすると、

「本音を言うと、サブスクでとどまらずCDを買ってほしいですが(笑)、それだけの時代でもないですし、逆に言えば、私のことに興味を持ってくれた方が気軽に検索できる時代にもなったので、まずはどんどん聴いてもらえたら、という気持ちです。さらに、いいなと思ってもらえたら、ぜひコンサートにいらしてください。今年はデビュー30年目につながる大事な年で、コンサートも数十本が予定されています。本当に頑張りますので、よろしくお願いいたします!」

「今は全国ツアーのことで頭がいっぱいで、誤解が生じる可能性がある情報発信は極力避けたい。今回の記事でも、音楽に関することだけ書いてほしい」と語った華原朋美。さまざまな障壁を乗り超え、デビュー29年目にして、今なお歌手としての最高到達点を目指そうとする姿には、中高年世代の多くが大いに刺激を受けるのではないだろうか。それでいて、“自分も彼女みたいに頑張ってみよう”と、その存在を身近に感じさせるのも、彼女の大きな魅力だと強く感じた。

(取材・文/人と音楽を繋げたい音楽マーケッター・臼井孝)

華原朋美(かはら・ともみ)
千葉県出身、8月17日生まれ。’95年に歌手デビューし、「I BELIEVE」「I'm proud」などミリオンヒットを連発。一時の活動休止を経て、’10年代はカバーアルバム『MEMORIES』が2作連続オリコンTOP10入り。’23年末には関東地方で5公演のホールツアーを成功させた。現在も歌手活動をメインに、女優としてのドラマ出演や、バラエティ番組、CM出演等、多方面で活躍中。来年で歌手デビューから30周年を迎える。Xアカウントは(@kahalatomomi_tk)、Instagramは(@tomomi_kakala)。

臼井孝(うすい・たかし)
人と音楽をつなげたい音楽マーケッター。1968年、京都市生まれ。京都大学大学院理学研究科卒業。総合化学会社、音楽系の広告代理店を経て、'05年に『T2U音楽研究所』を設立し独立。以来、音楽市場やヒットチャートの分析執筆や、プレイリスト「おとラボ」など配信サイトでの選曲、CDの企画や解説を手がける。著書に『記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝』(いそっぷ社)、ラジオ番組『渋谷いきいき倶楽部』(渋谷のラジオ)に出演中。データに愛と情熱を注いで音楽を届けるのがライフワーク。

デイリー新潮編集部

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