「バッティングフォームがかなり崩れている」筒香嘉智、巨人入り報道を広澤克美氏はどう見ているか
MLBとNPBの違い
「阪神時代の福留さんは、いかにもベテランらしい、勝負強いバッティングでファンを魅了しました。とはいえ、数字は正直です。打率が2割を切ったり、ホームラン数が一桁だったり、というシーズンも珍しくなかったのです。率直に言って、“メジャー帰りのスラッガー”という期待に答えた成績だとは言えませんでした」(同・記者)
他にも帰国してしばらくの間は日本野球に苦しめられたバッターとして、OBなら中村紀洋、岩村明憲の両氏。現役ならヤクルトの青木宣親や中日の中島裕之といった名が浮かぶ。
つまり、「日本の投手陣が飛躍的な進歩を遂げる」以前から、帰国してバッティングの低迷に苦しんだ日本人野手は少なくなかったのだ。
もちろん年齢の要素は大きいだろう。20代をNPBとMLBで過ごし、再びNPBに戻ってきた時は30代になっている。だが、野球評論家の広澤克実氏は「日本とアメリカの野球が全く違うということも大きいのではないでしょうか」と指摘する。
「MLBは全162試合で、移動、移動、また移動という日々です。アメリカの国土は広大で、時差ボケに悩まされる選手さえ出ます。試合日程は苛酷で、体調管理と練習時間の確保に苦労します。おまけにバッターにとっては、大半のピッチャーが初対戦と言っても過言ではありません。今年3月に行われたMLBの開幕戦で大谷選手はダルビッシュ投手と対戦しましたが、次の対戦はいつなのか見当も付かないほどです。ところがNPBの場合、以上の要素が全て逆転してしまいます」
NPBは狭い社会
セ・リーグだと北海道、東北、九州にチームがない。さらに巨人、ヤクルト、DeNAは首都圏が本拠地のため、この3球団の選手なら自宅から相手チームの球場に向かうことができる。交流戦を除くと遠征は愛知県、兵庫県、そして広島県だけだ。
「パ・リーグは北海道や九州にチームがあるとはいえ、それでもMLBに比べると移動距離は格段に短いと言えます。時差ボケなどありませんし、巨人、ヤクルト、DeNAの選手はシーズンの半分以上を自宅で過ごすことができます。規則正しい生活を送ることが容易で、体調は維持しやすいですし、猛練習を積み重ねて試合に出ます。対戦相手のピッチャーは顔見知りが大半ですから、データ分析というレベルではなく、実体験として相手のことを知り抜いています。もちろん相手ピッチャーも自分のことを熟知しているので、互いに“裏の裏をかく”といったことは日常茶飯事です」(同・広澤氏)
MLBのシーズンをNPBに当てはめると「毎日がオールスター」という状態のようだ。常に初対面の相手と真っ向勝負を挑むというのも、選手にとっては大変だろう。一方、NPBは互いのことをよく知っているという狭い社会での対戦になる。その中で毎日、切磋琢磨を積み重ねる。こちらも大変なのは言うまでもない。
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