“健康被害”拡大で大揺れ「小林製薬」…過去の“炎上案件”に学ぶ、企業が「釈明会見」で語るべきこと

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愛され企業

 そして、2008年、ファミレスのサイゼリヤで有害物質・メラミンがピザに混入されていたことが発覚。この時はレシートはあった方が望ましい、と発表されたから虚偽申告をする者が続出。「4勝3敗」「3000円ほど稼がせていただきました」などとSNSに書きこまれた。あとは4人組が「名演技」により7500円を獲得したことも報告されていた。

 こうした例はあったものの、サイゼリヤの場合はレジの記録からその時に何枚のピザが注文されていたか分かるため、大抵の場合は嘘がバレていたようだ。毅然とした対応が重要なのである。

 今回、Xには「#小林製薬がんばれ」的なハッシュタグができており、同社が日頃から愛され企業であることが窺える展開になっている。普段からのイメージ戦略が重要なのは「ペヤングゴキブリ混入事件」の時も認識された。2014年12月、「ペヤングソース焼きそば」にゴキブリが入っていたというXの投稿がされた。ペヤングは元々愛されブランドであったこともあり、この時は投稿者による自作自演説が出たほか、投稿者に対して「回収になったらどうしてくれるんだ」といった批判が多数寄せられた。

調査中でよかったのでは

 結局製造元のまるか食品は工場のラインを止め、約半年後にゴキブリが入らないような新パッケージデザインのペヤングを販売。この時は「ペヤング復活祭」などと題してYouTuberが動画を多数投稿したし、スーパーでも「ペヤング復活祭」のコーナーを作って盛り上がった。

 かくして普段から愛されている企業であれば、消費者の後押しは見込めるだろう。小林製薬の場合、機能解説がド直球の分かりやすい商品名(ナイシトールや今回のコレステヘルプなど)と、大量のCM出稿でそのイメージを作ってきた。大慌てで謝罪するのではなく、回収はしたうえで「調査中」と言い張った方が良かったのでは、と思うのである。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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